首位阪神がドラフト1位森下翔太外野手(22)のプロ初サヨナラ打で劇的勝利を飾った。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)はこの日も7回無失点と試合をつくった大竹耕太郎投手(27)のマウンドさばきに注目。「勝負を焦らないから試合をつくれる」と納得した。【聞き手=佐井陽介】


それにしても阪神大竹投手は勝負を焦りませんね。注目したポイントは0-0の7回表1死一塁から、打者2人に計9球を投じた中で3度もけん制球を挟んだマウンドさばきです。投手目線で言えば、あの場面であそこまで走者にも気を配れるのは、さすがとしか言いようがありません。

広島の一塁走者は投手のクセを盗むのがうまく、かつ走れる堂林選手。1回目のけん制球は7番林選手に4球目を投じる直前でした。カウントは1ボール2ストライク。追い込んで早くアウトが欲しくなるところで、足を上げない不意を突いたけん制球を1回。さらに4球目がファウルとなった直後、もう1度けん制球を入れています。

林選手を三飛に打ち取った後も、走者にスキを与えません。2死一塁、8番会沢選手に1ボール1ストライクとしたところで再びけん制球。こうなると、堂林選手もなかなかスタートは切れません。さらに会沢選手の中前打で2死一、二塁とされた後も、二塁走者を目でけん制する時間をきっちり取っていました。この時、打者は9番森下投手。打者アウトに集中したくなる場面でもしっかり周りが見えているから、これだけ試合をつくれるのでしょう。

この日は運も味方しました。初回は先頭の菊池選手に粘られて12球目に四球。バタついてしまいそうな立ち上がりで、2番上本選手から空振り三振ゲッツーを奪えたのは大きかったと思います。珍しく外角高めに抜けた直球がランエンドヒット失敗を誘った1球で、一気に流れを引き寄せられたような気がします。

とはいえ、7回をトータルで総括すると、この日も落ち着いたマウンドさばきが際立った印象です。走者を出しても頻繁に「間」を変えたり、けん制を挟んだり…。決して勝負を焦らない落ち着きが、移籍1年目からの快進撃につながっているのではないでしょうか。(日刊スポーツ評論家)