5割復帰と連敗ストップをかけた両チームの試合は、捕手に注目した。まず、中日木下。前日までに36試合に出場し、マスクをかぶった時の投手の防御率は2・72。立派な数字だ。ところが、出場時の勝敗は13勝23敗と大きく負け越す。もちろん、木下1人の責任ではないが、勝てない要因が、この日も表れた。

2回1死一塁で秋広。バッテリーが避けたいのは、引っ張られて一、三塁を招くこと。ストレート、チェンジアップ、スライダー、カーブと小笠原の持ち球のうち、もっとも引っ張りやすいのは緩いカーブとなる。ところが、木下はそのカーブを初球で要求し、引っ張られ、もっとも避けたかった事態を招いた。続くウォーカーの遊ゴロを龍空が捕れず、先制を許した。

セオリーと異なる球種を選んだ意図は何だったのか。考えられるのは、引っかけさせて併殺を狙ったということぐらいだ。その意図自体は理解できる。ただ、そうであれば、例えば、初球で外角ストレートの後、同じ外へのカーブで緩急を生かす。または、内角ストレートの後、対角線で外にカーブ。そうすることで、カーブがより有効となる。

私も捕手をやってきたので分かるが、初球の入りは非常に難しい。確かに、秋広へのカーブは高かった。低めにくれば、引っかけてくれたかも知れない。だが、それで済ませてはいけない。直接、失点につながったエラーもいただけないが、そこに至る過程で防げることがあった。それを追究するのが捕手の仕事。もし、秋広への初球がカーブでなければ、違う展開になっていたかも知れない。それほど、捕手の責任は重い。

3回の2失点目も同じことが言える。先頭吉川に2ストライクから甘いチェンジアップを二塁打にされたのがきっかけ。1点ビハインドであり、球数をかけて良かった。5回の大城卓の満塁弾は、1ストライクからボール気味に構えたが、ストレートが中に入った。小笠原も分かっていただろうが、念には念を入れて、木下は大きなジェスチャーを取るなど、すべきだった。

一方の巨人。大城卓は前日まで37試合に出場し、防御率3・71、19勝18敗。防御率は木下より1点近く高いが、チーム成績がいいのは、この日のように自らが打っていることもある。マスク時の防御率を下げられれば、チーム成績はさらに上がるはずだ。

パスボールや送球エラーだけではない。捕手には、リード面で数字に表れないエラーがついて回る。それを極力減らすことが、“勝てる捕手”への道となる。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 5回裏巨人2死満塁、大城卓に満塁本塁打を浴びる小笠原(撮影・たえ見朱実)
巨人対中日 5回裏巨人2死満塁、大城卓に満塁本塁打を浴びる小笠原(撮影・たえ見朱実)