首位阪神が今季2度目の5連勝を飾り、2位DeNAとのゲーム差を4に広げた。同点の10回表2死から一挙4得点を奪った会心の勝利。虎OBで日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は4つの好守に大きな価値を見いだした。【聞き手=佐井陽介】

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ヤクルト4番村上選手に1発を浴びた直後の10回裏2死走者なし、阪神のブルペンでは守護神の岩崎投手が待機していました。もう1人か2人走者が出ていれば、マウンドに上がっていたかもしれません。少なくとも、もう1度肩は作っていたことでしょう。そういった意味でも最後、5番塩見選手の三塁線への痛烈なゴロを飛びついてアウトにした三塁佐藤輝明選手のプレーには価値があったと思います。岩崎投手の疲労を大きく減らすことができたのですから。

同点の10回表2死走者なしから一挙4得点を奪った一戦。打線の粘り強さはもちろんのことですが、この日は4つの好守があったからこそ5連勝を飾れたのだと感じます。1つ目は二塁中野選手の素早いスナップスローです。1点を先制された直後の2回裏1死満塁。9番サイスニード投手のゴロを伊藤将司投手がはじいた場面、素手の捕球から間一髪でアウトをもぎ取りました。もし打者走者も生かしていれば、この回2失点で止められなかった可能性は十分あります。流れを完全に渡さないという意味でも、非常に大きなプレーだったと感じます。

6回裏には遊撃木浪選手のナイスストップも効きました。打線は1点を追う6回表に無死一塁から三振ゲッツーで無得点。続く6回裏1死一、二塁、5番塩見選手の二遊間へのゴロに寸分狂わず飛びついて、正確なバックトスで二塁封殺を完成させました。もしこの打球が抜けて追加点が入っていれば、完全にヤクルトペースになっていたはずです。さらに1点リードの8回には左翼ノイジー選手が、先頭1番並木選手の左中間への飛球を地面スレスレでダイビングキャッチ。そして10回裏は佐藤輝選手の美技です。

この4つのプレーのうち、どれか1つでも欠けていたら、流れは一気にヤクルトに傾いていたかもしれません。最後は岩崎投手の3連投まで防いだ首位阪神。試合を壊さない守りの数々からも強さを感じます。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 2回裏ヤクルト1死満塁、サイスニードの打球を素手で捕球し、一塁へ送球する二塁手中野(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 2回裏ヤクルト1死満塁、サイスニードの打球を素手で捕球し、一塁へ送球する二塁手中野(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト1死一、二塁、塩見の打球を好捕し遊ゴロに仕留める遊撃手木浪(左)(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト1死一、二塁、塩見の打球を好捕し遊ゴロに仕留める遊撃手木浪(左)(撮影・鈴木みどり)
8回裏ヤクルト無死、並木の飛球に飛び込み好捕する阪神左翼手ノイジー(撮影・藤尾明華)
8回裏ヤクルト無死、並木の飛球に飛び込み好捕する阪神左翼手ノイジー(撮影・藤尾明華)