米レンジャーズから新加入したソフトバンク有原航平投手(30)が初登板初先発し、6回2/3を5安打1失点(自責0)と好投した。移籍後初白星とはならなかったが、ウエスタン・リーグを含めても今季最多102球を投げ切り、上々の鷹デビューを飾った。巨人、レッドソックスなどで活躍した上原浩治氏(48=日刊スポーツ評論家)が、メジャー帰りの有原の投球を分析した。

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メジャーからソフトバンクに移籍した有原が、やっと1軍での復帰登板を果たした。日本での実績は十分だったが、先発予定だった大関の体調不良で先発の機会が回ってきただけに、それほどいいピッチングは期待できないと思っていた。しかし、投球内容を見ると「なぜ今まで投げなかったんだろう」という疑問が深まるような内容だった。

立ち上がりこそ、やや高めに浮く球が多かった。しかし球威も制球力も1軍で通用するレベルに達していた。特に素晴らしかったのは「入り球」。初球や2球目で投げる球は、真っすぐにしろ変化球にしろ際どいコーナーを突いていた。ただ、追い込んでからの球が甘くなる傾向があり、6回2/3で三振は2個で少なかった。この「詰め」の甘さが技術的なものなのか、球数を少なくするためのものなのか、今回の登板だけで判断はできないが、強打のDeNA打線を相手に1失点という結果は、十分に合格点を与えられるものだった。

ここまで2軍戦では8試合に登板して2勝0敗で防御率は3・83。これだけ投げられていれば、どこかをケガしていた可能性はないだろう。防御率が示すように、投球内容が悪いと判断されたのだろうが、これだけ実績があれば、2軍戦では「気持ちが入らなかった」という可能性はある。今試合前までのソフトバンクの防御率はパ・リーグ5位の3・24。8試合はいずれも100球未満だが、先発できる状態なら、1度ぐらいは1軍で先発していてもよかったと思えるような内容だった。

今年に限って見ても、ソフトバンクは現役ドラフトで阪神に移籍した大竹と、FAの人的補償で日本ハムに行った田中正が活躍している。選手が活躍するかしないかは、実力以外にそのチームの置かれた環境などメンタル的な相性など、いろいろある。

実際にどうなっているかは分からないが、環境を変えれば活躍できる選手に対し、どうやれば結果を出せるようになるか、考え直す必要性を感じる。選手がよくなれば、それがチーム力のアップにつながることは言うまでもない。有原に勝ち星はつかなかったが、今試合の勝利は有原の活躍なしに語れない。考えさせられる試合だった。(日刊スポーツ評論家)