ささいなきっかけで、試合の「流れ」は変わってしまう。特に今シリーズはささいなきっかけから変わった小さな「流れ」が、大きな「激流」になって一方的なワンサイドゲームになっている。1勝1敗で迎えた3戦目がどういう「流れ」になるのか? ささいな「流れ」に注目していた。

最初にささいな「流れ」があったのは、3回裏1死一塁からだった。打席に森下を迎えたが、近本が初球に盗塁を試みてアウト。結果にかかわらず、走ることそのものは悪くない。しかし、走るまでの内容に阪神の「焦り」を感じた。

盗塁がアウトになるまでの「流れ」を振り返りたい。先頭打者の近本が右前打。追加点がほしい場面で次打者は中野。しかし3番の森下は、前の2試合で9打数1安打3三振。加えて三振併殺が1つに、併殺打が2つ。なんとか中野が打って好機を広げてほしいと思っていただろう。しかし中野はレフトへのファウルフライ。不振の森下を迎えた。

一塁走者の近本は盗塁を狙っていた。ただし先発の東のクイックモーションは、直球で1・15秒。まともに走ってもアウトになる。この状況で成功させるなら(1)いいスタートが切れるとき(2)変化球を投げるとき、2つが重ならなければ難しい。だが条件がそろいそうな状況となった。

中野への投球は3球すべてが直球だった。そして森下への初球を投げる前に2度、けん制をいれている。真っすぐは4球も続かないだろう。けん制も3度は続かないだろう。そして好スタートを切ったが、投球は真っすぐ。ストライク送球でアウトになった。

走塁死は試合展開を変えるケースがある。ここからはオリックスの「流れ」になった。2死から頓宮に直球勝負し、ソロを浴びた。2ボールから変化球を2球続けて空振りしていた長距離砲に対しての攻めではない。5回1死一塁では、投手・東の送りバントを処理した伊藤将が二塁へ悪送球。うまいバントなら確実に1アウトを取りにいっただろうが、併殺を狙ってのミス。宗に打たれたタイムリーも、フルカウントからど真ん中の真っすぐだった。次打者が強打者・森で、四球を嫌がったための甘い球だった。

阪神にとっては巡り合わせが悪いというしかない展開で、6回にも1点を追加され5-1。終盤に1点差まで詰め寄っただけに、中盤までの「流れ」が悪すぎた。ただ、9回も同点の走者を得点圏まで進めるなど、すんなりと負けずに食い下がった。4戦目の「流れ」がどちらに流れるか、注目したい。(日刊スポーツ評論家)