想像していたとはいえ、中日の内野のレギュラー争いは、熾烈(しれつ)を極めている。ファーストこそ、中田をメインで起用するようだが、セカンド、サード、ショートは誰が開幕スタメンになるか、まったく想像できない。チーム内に競争があるのは緊張感が出ていいことだが、3ポジションで軸になる選手がいないのだから、競争というより“カオス状態”といったところだろう。

午前中のシートノックでは、セカンドに石垣、福永、山本、サードにカリステ、樋口、ショートに村松、津田、辻本、ロドリゲス(育成)が入っていた。ここに加え、2軍にはサードの本命・石川昂がいて、セカンドには右肩手術から復帰している2年目の田中、昨年はショートでスタメン出場が多かった龍空がいる。内野の3ポジションでレギュラーが決まっていないチームは、過去を振り返っても思い出せないほどだ。

競争が激しいといえば聞こえはいい。しかし、これだけの選手で3つのレギュラーポジションを争うのだから、決してレベルの高い競争にはならない。走攻守で抜きんでた選手がいない証拠でもあり、これだけ選手の数が多いと、みんな平等にチャンスを与えればその分、出場機会は少なくなる。しかもほとんどの選手が複数のポジションをこなしている。専門性の高い内野のポジションを覚えるためには、時間も機会もとても足りないだろう。

とはいっても、無い物ねだりしても仕方がない。見切り発進になってしまうだろうが、3月中旬頃までにスタメン起用選手を見極め、その選手を50打席から100打席ぐらいまで我慢して育てる覚悟がいると思う。これだけ大がかりな競争をいつまでも長く続けていたら、プレーが中途半端になってしまい、かえってトータルとしてチームの戦力は上がらなくなると思う。

あとは立浪監督の「好み」で「守備力」と「攻撃力」のどちらを優先させるかにかかってくる。本来、二遊間は頑健な体を持ち、長くプレーする可能性を持った日本人選手に任せたいが、立浪監督は監督契約の最終年を迎えている。今シーズンだけでも、実力が上だと判断した選手を起用するだろう。今後もチーム内での争いを注目していきたい。(日刊スポーツ評論家)

中田にノックを打つ中日立浪監督(撮影・森本幸一)
中田にノックを打つ中日立浪監督(撮影・森本幸一)
立浪監督と握手を交わす宮本慎也氏(右)(撮影・森本幸一)
立浪監督と握手を交わす宮本慎也氏(右)(撮影・森本幸一)