プロもアマも問わず、日本球界は「投高打低」の流れの中に、どっぷりと漬かっていると言っていいだろう。各球団の新戦力を見ていても、いい投手は次々と現れるが、いい打者を探すのが難しい。新戦力でなくても、順調に階段を上っている投手は多いが、打者は伸び悩んでいるように感じる選手が多い。特に今試合で見た楽天の打者は、寂しく感じてしまった。

本来、主力選手として活躍していなければいけない年代の選手に成長が見られない。4番に起用された田中和、DHの茂木、6番を打つ辰己は、年齢的に全盛期を迎えている世代だろう。しかし、スイングを見る限り、なにか工夫しているようには感じないし、肉体的にもそれほど変わったようには見えない。まだキャンプの時期ではあるが、例年と同じような成績で終わるのだろうな、と予感させるスイングだった。

近年、ホークアイ、トラックマン、ラプソードなどの最新機器を使い、データや動作解析に力を入れているチームが急増している。楽天もその1つだが、各打者の打撃フォームを見ると、以前と変わらずに「上からたたく」や「バットのヘッドを返して当てる」といったスイングをする選手が多い。おそらく、動作解析をして数値化しても、どこをどう直していいのか? どういう練習方法をすればいいのか? どこを強化するのか? そういったことを教えられる人材がいないのだろう。

阪神がどこまで力を入れているのかは分からない。それでも近本、中野の1、2番コンビはアベレージヒッターだが、こねるようにしてゴロを狙うようなスイング軌道ではない。楽天の小深田、村林の同型の打者と比べても、スイングが違うのがひと目で分かる。今季は打撃フォームを改造した佐藤輝も順調な調整が続いている。今季は大きな飛躍を感じさせるようなスイングになってきている。阪神も決して強打のチームではないが、貧打解消への下地作りは進んでいる。

両チームとも、投手陣は素晴らしかった。早川も左打者に対して苦手な内角球を投げられるように意識していた。2年目の荘司も良くなっているし、1軍でなじみのない清宮も、150キロ台中盤の真っすぐを投げていた。阪神も青柳、伊藤将の主力投手は順調そうで、プロ入り2年目の門別も勢いのある真っすぐを投げていた。

今試合には出ていなかったが、楽天には浅村という素晴らしい打者がいる。手本になるような打者がいるのだから「自分はそういうタイプの打者じゃない」とか決めつけず、少しでも強いスイングで強い打球を打てるように工夫をするべきだと思う。

ゴロよりフライを打つ方が長打率が上がり、チームの得点力が上がるのはデータで証明されている。打球速度が上がれば、ヒットの確率も上がることが証明されている。貧打のままで取り残されていれば、Aクラス入りは難しくなる。(日刊スポーツ評論家)