オープン戦で調子の上がらない阪神のチーム状況を評論しようと思っていたのだが、オリックス宮城の状態の良さに目を奪われてしまった。今季はエースだった山本(ドジャース移籍)が抜け、各球団のエース同士の投げ合いで勝てるかが焦点になると思っていたが「宮城が投げれば大丈夫」と思わせる内容だった。

今試合の宮城のピッチングは、阪神打線が打てなくても仕方がない。調子が悪い時は右打者の内角に投げるクロスファイアがシュート回転したり、スピードも制球力もいまひとつになるときがあるが、球のキレも制球力も抜群。4回までの打者16人に対し、打者有利のバッティングカウントになったのは、近本、中野、ミエセスの初球がボールになった3回だけだった。

5回は力が入ったのか、少しボール球が先行してピンチを迎えたが無失点。終わってみれば6回6安打1四球で無失点。MAX153キロをマークしているし、88球を投げてスタミナの不安も感じられなかった。むしろ、スタミナ温存のため、ピンチを迎えるまでは力をセーブして投げているようにも見えた。そのように見えたのも、打者の力量を上回っている証拠だろう。

投手陣の戦力は文句なしだが、一抹の不安はあった。昨年まで、他球団のエース対決を制してきた山本の抜けた穴は、単純なイニング数、勝利数だけでは埋め切れない可能性があると思っていた。優勝するためには、どうしても優勝を争うライバル球団とのエース対決に勝つことが必要。今の宮城の力量があれば、それが可能だと思わせる内容だった。

そんな宮城を相手に阪神打線の不安点を指摘するのは忍びないが、2番の中野は明らかに自分のバッティングを見失っていた。もともと構えてからグリップの位置を下げながら打ちにいく変則打法。調子を崩したときに修正するのが難しいタイプだと思っていた。言葉で説明するのが難しいが、グリップを下げて打ちにいくのに、バットが立ったまま打ちにいっている。これではインパクトまでにバットのヘッドが加速するスペースがない。

修正するなら、打ちにいくときに捕手側にヘッドを落とし、ムチを使うような感じでバットを出していかないといけない。今試合を見る限り、バットのヘッドを立てて上から打ちにいこうとしているように見えたが、本来の中野のバッティングではない。もっとスイングの後ろ側を大きくするようなイメージで打っていけば、本来の打撃を取り戻せると思う。

オープン戦で不調だった佐藤輝は3安打。第1打席は昨年までの悪い癖が出てバットが外回りしていたが、2打席目と3打席目のヒットは修正できていた。これで開幕への準備は整ったと思う。

セとパのチャンピオンチーム。両リーグを盛り上げていってほしい。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対阪神 オリックス先発の宮城は6回を無失点に抑える(撮影・前岡正明)
オリックス対阪神 オリックス先発の宮城は6回を無失点に抑える(撮影・前岡正明)
オリックス対阪神 笑顔でナインを迎える宮城(撮影・前岡正明)
オリックス対阪神 笑顔でナインを迎える宮城(撮影・前岡正明)