阪神は優勝争いに生き残れるのか。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(43)が勝負の後半戦に向けて、古巣タイガースの現在地を分析した。チームは首位巨人に3・5ゲーム差の4位。それでもレジェンドOBが「悲観していない」と言い切った理由とは-。【聞き手=佐井陽介】
いよいよ勝負の後半戦が始まります。首位巨人に3・5ゲーム差の4位阪神は果たして優勝争いに生き残れるのでしょうか。個人的には悲観していません。
8、9月は各チームの選手層の厚さが如実に差となって表れる時期です。特に投手陣は酷暑の中、シーズン序盤の疲労が一気にダメージに変わるタイミングでもあります。昨季は広島、DeNAの救援陣が夏場に不調に陥り、優勝争いから後退していきました。この時期に計算できる投手の枚数をどれだけ余分に準備できているかどうか。阪神はこの観点で見れば、他球団に勝っていると考えます。
阪神投手陣には“新戦力”候補が何人も残っています。中でも高橋投手、門別投手は楽しみな存在です。支配下に復帰したばかりの高橋投手は本来の状態を取り戻せば、常に相手打線を圧倒できる実力の持ち主。シーズン終盤に「救世主」となってくれる可能性は十分あります。門別投手にしても開幕前にブレーク候補と目されていた存在。体の張りさえ取れれば、強力先発ローテ陣に割り込めるだけの力を持っています。
一方で2軍調整中の実績組もこのまま終わらないでしょう。2年連続で開幕投手を任された青柳投手はもう1度状態を上げてくるはずです。左肩違和感で開幕2軍スタートとなった岩貞投手はブルペン陣の精神的な支えという意味でも、勝負どころでは1軍に戻ってきてほしい投手の1人です。このようにファームで控えるメンバーを見渡しても、ここまで投手の枚数がそろっているチームは他になかなか見当たりません。
特に阪神救援陣の強みは「誰かが抜けたらガタッと崩れる」という心配がいらない点です。守護神は岩崎投手とゲラ投手が高いレベルで併用されています。セットアッパーにしても、桐敷投手や石井投手を中心に調子次第で使い分けられるほど人員が豊富です。勝負の夏場。計算できる投手の枚数で勝る阪神からすれば、他球団に差をつけられる季節でもあるわけです。
もちろん、打線にはまだ得点力不足という課題が残されたままです。ただ、これは阪神に限った話ではありません。今季は日本球界全体を見渡しても、ロースコアの試合が相次いでいます。シーズン終盤にいきなり打ち合いが多くなるとも考えづらいので、現実的には接戦をモノにしていくための努力を続けていくべきではないでしょうか。
私が重視するポイントは「次打者の心理的負担を減らすこと」です。たとえば無死一、二塁の場面。凡飛を打ち上げて1死一、二塁にしてしまうと、次の打者には「安打を打たなければ点を入れられない」という重圧がかかります。それがボテボテの内野ゴロでも1死一、三塁にさえできれば、「犠飛でも併殺崩れでも1点」という気持ちで打席に入れます。この違いは想像以上に大きいものです。後半戦はそんな「次打者を楽にする」という意識をより強く持つ必要があるのではないでしょうか。
投手層の厚さを前面に押し出し、少ないチャンスを丁寧に拾って僅差で勝っていく。1点リードを2点リードにして救援陣の心理的負担も減らしていく。そんな作業を継続できれば、阪神はまだまだ優勝争いに生き残っていけるはずです。(日刊スポーツ評論家)







