プロ野球の担当記者あるあるを、ひとつ。6月にもなれば、担当球団の状態がイマイチだと、時候のあいさつが「元気?」「調子はどう?」から「大丈夫?」「どうなってるの?」に変わる。巨人が苦しむ今、ご多分に漏れず、記者も周囲に会話の冒頭から心配される。「大丈夫です」と胸を張って言いたいところだが、今は苦笑いが関の山だ。

 ミスターは違った。4日、巨人終身名誉監督の長嶋茂雄氏(81)が、故郷の千葉・佐倉市の「長嶋茂雄記念岩名球場 改修記念式典」に参加し、イースタン・リーグのロッテ-巨人戦を観戦した。試合中に行われた記者会見では椅子に腰を掛け、セレモニーへの感謝、郷土への思いを穏やかに語っていった。

 質疑応答が落ち着いたところで「1軍なんですが…」と質問が飛んだ。会見場からあふれそうなほど殺到した33社81人の報道陣が、固唾(かたず)をのんだ。長嶋氏は「元気がないというかねえ。難しいな、野球は」と漏らした。だが、間髪入れずに続けた。「まだ終わってないよ。北海道のあれがあったね」。

 96年に首位との最大11・5ゲーム差をひっくり返した「メークドラマ」は、7月9日の札幌円山球場での広島戦を、9者連続安打で快勝したのが幕開けだった。「まだまだ6月、7月、ましてや8月、9月に大事な月がある。今はゆっくり腰を据えて」と焦りを制した。北海道の「あれ」をほうふつとさせる分水嶺(れい)が、今年は訪れるのか。ミスターから「大丈夫ですよ」と言われている気がした。【巨人担当 浜本卓也】