元最速男がいきなり切り出した。交流戦オリックス3連戦で7年ぶりに来日した元横浜(現DeNA)マーク・クルーン氏(44)。6月17日の試合前に行われたイベントで、佐々木主浩氏(49=日刊スポーツ評論家)とのトークショーを終えようとしたときだった。「最後に言いたいことがある」と、腰掛けていた椅子から立ち上がった。

トークショーで笑顔を見せる佐々木氏(左)とクルーン氏(撮影・松本俊)
トークショーで笑顔を見せる佐々木氏(左)とクルーン氏(撮影・松本俊)
トークショーに参加した佐々木氏(右)は登場した際にクルーン氏が深々と頭を下げている姿に笑顔を見せる(撮影・松本俊)
トークショーに参加した佐々木氏(右)は登場した際にクルーン氏が深々と頭を下げている姿に笑顔を見せる(撮影・松本俊)

 「感謝の言葉を送りたい。日本にきて1年目。ハマスタ(横浜スタジアム)のマウンドへリリーフカーで向かうと、スタンドは静まりかえっていた。ファンの皆さんは佐々木さんの登場を期待していることはすぐに分かった」

 メジャーリーグのマリナーズから復帰した大魔神の人気は絶大なものだった。そして、代わってクローザーを務める助っ人外国人にとって、大きなプレッシャーとなってのしかかっていた。そんなクルーン氏に、声を掛けたのが大魔神だった。「気にすることはない。俺もサポートするから」。その言葉だけじゃなく、周囲にも働きかけた大魔神のサポートに感謝しかなかった。

 「メディアの前でも『応援してやってくれ』と言ってくれて、次の日から歓声が起きた。それがあったから今の自分がいる。そう思っている」

 3年間、ベイスターズのクローザーとして84セーブをマーク。大魔神に代わる抑えとして活躍した。移籍した巨人では当時日本記録の162キロをマークした。その直球で、野球ファンに夢を与えた。

現役時代のマーク・クルーン氏(2005年2月16日)
現役時代のマーク・クルーン氏(2005年2月16日)

 そして最後に言った。「もう1人、当時監督だった牛島さん。クローザーとして使ってくれたことを感謝しています」。10年シーズン限りで米国へ戻った。それ以来となる日本で、伝え忘れた感謝の言葉を残していった。【栗田成芳】