強さは高校生からでも学び取ることができる。18日、ナゴヤドームのグラウンドに現れた中日荒木雅博内野手(39)は興奮気味に話しかけてきた。短くバットを持つ打撃フォームをまねしながら「見た!? 三本松の2番バッター。俺、ああいう風になりたい」。大の高校野球好きでもある荒木が、心打たれた選手がいた。

 今夏の甲子園、公立校唯一の8強入りとなった三本松(香川)の2番打者・多田祐汰二塁手(3年)だった。3回戦の二松学舎大付戦(東東京)で1打席目から3打席連続で犠打を決め、打線をつなぐことを貫いた。3個目の犠打は貴重な先制点にもつながった。

 今季2000安打の大記録を達成したベテランは「チームに徹する気持ちがある。彼はチームのために3つバントをしたんだから。最後にはセンター前をちゃんと打ってつないだ。利己的じゃチームは勝てないということ。自分のためじゃダメなんだよね」。決して派手ではない。準々決勝で敗退してしまったが、勝利のためには欠かさないピースだ。

 荒木は移動中、高校野球の映像を見て気持ちを盛り上げることもある。「こんな風に心打つ試合がしたいよね。高校野球は学ぶところがたくさんある」。どこか、今の中日の現状を歯がゆく感じているようだった。

 甲子園開幕から5日間、私は高校野球の取材に携わった。朝早くから球場の前に長蛇の列。スタンドには満員の観客と、毎年高まる高校野球人気を肌で感じた。必死に、泥臭く-。そんな姿を中日ファンも待っていると思う。【中日担当 宮崎えり子】