生命線はカーブにあった。7年前、来日してすぐ「肘の位置が高くなるように」と阪神ランディ・メッセンジャー投手(36)はカーブを教わった。すると、みるみる成績が向上。指導役は今季限りでの退団が決まった久保2軍投手コーチだった。「(日本に)来たときは投球が直球中心で単調だった。どちらかと言うと不器用だからね。なんとかお願いして、カーブを覚えてもらってから、投球の幅が広くなったのを覚えている」と当時を懐かしむ。

 投球時にリリースポイントを高い位置に安定させることで、自然と力強いボールが投げられる。「(ボールを離す)トップがしっかりと上がらないと、きっちりしたカーブは投げられないから。真っすぐが速いのも、肘が高く上がっている証拠」と同コーチは説明していた。新球を覚えてからは右腕を上から振り下ろす意識で投げ込んできた。それを続けることで現在の投球フォームにたどり着いた。

 ただ、育ててくれた恩師は、今季限りでチームを去ることになった。「大好きだったので寂しい」。久保コーチの退団が決定後、鳴尾浜で本音を漏らした。

 恩返しは結果で示す。復活を目指す助っ人が、秘伝のカーブと150キロを超える自慢の直球を武器に、虎を85年以来の日本一に導く。【阪神担当=真柴健】

 ◆真柴健(ましば・けん)1994年(平6)8月25日、大阪・池田市生まれ。京産大ではルールさえ知らなかったラグビー観戦に熱中した。17年入社。5月からプロ野球・阪神担当。