西武榎田大樹投手(31)が「日本生命セ・パ交流戦」の阪神戦に先発し7回5安打3失点で、8年目で自己最多となる5勝目を挙げた。開幕の約2週間前に阪神からトレードで移籍。初めて投げた古巣相手に粘り腰を発揮。負ければ今季初めて首位を明け渡す可能性があった一戦でチームを救った。

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 特に試合序盤、阪神打線は知り尽くした西武榎田の直球に差し込まれていた。140キロ前後なのに、だ。「スピードだけなら去年の方が140キロ後半出ていましたからね。今の球速で押せているのは取り組んできた成果ですかね」。左腕は照れ臭そうにほほ笑んだ。

 阪神在籍時の昨季は1軍登板3試合。オフに原点回帰を図った。東京ガス時代の同期の楽天美馬の紹介で、スポーツトレーナー鴻江寿治氏主催のトレーニング合宿に初参加。福岡県内でソフトバンク千賀、DeNA今永らと投球フォーム動画を分析し、1つの結論を導き出したという。

 「もともと自分の真っすぐはシュート回転気味だったのに去年は“真っスラ”系になっていた。右打者への外角球がカットして中に入ってしまったり…。そこで、上からたたく意識をなくしたんです。これまでは角度をつけた強いボールを投げようとしていたけど、今年は打者との距離を詰めていこう、と」

 プロ1年目の11年2月、沖縄キャンプ中に先輩の下柳剛氏から授かった金言を思い返した。「オマエは背が高くない。角度は気にせず打者の近くで投げた方がいいよ。大股で下半身を使うフォームを大事にした方がいい」。低い重心からリリースポイントを1ミリでも打者に近づけるスタイルに再転向した結果、強く押し込む直球を取り戻せた。「今の球筋は1年目のそれに近いですね」。移籍1年目の再ブレーク。崖っぷちでも腐らずメカニックを追求したから今がある。【阪神担当=佐井陽介】