北海道を襲った最大震度7の大地震から1週間後の今月13日、安平町をはじめ震源地に近く被害の大きかった地区に、日本ハム稲葉篤紀スポーツ・コミュニティー・オフィサー(SCO、46)の姿があった。避難所への訪問や炊き出しのほか、足を向けた場所に野球場がある。町営の小さな球場だが、大地を走る亀裂に言葉を失った。「グラウンドが地割れして、液状化もしていて…。2年間は使えないみたい。どうしても、こういう場所は(復旧が)後回しになるからね」。普通のことが、普通ではなくなった人たちがいる。子どもたちの声が消えた球場を視察し、心を痛めた。なんとも、野球人らしい。

球団SCOの顔とは別に、「侍ジャパン」こと野球の日本代表監督も務める稲葉SCOは、実に多忙だ。球団行事の合間を縫って、日本列島津々浦々へ代表候補選手の視察へと足を運ぶ。8月上旬、2軍戦が行われた北海道栗山町にも稲葉SCOの姿があった。パラリンピックの正式種目でもある、車いすソフトボールのデモンストレーションに参加していた。車いすの操作に四苦八苦しながらも快打を飛ばし、会場を大いに盛り上げた。

二足のわらじは大変なのでは? と思って聞いてみた。「オレはSCOと代表監督の仕事は一緒だと思っているんだ。どっちも、野球の楽しさやスポーツの可能性を伝えていく。つながりを持ってやっていかないと、と思っている」。SCOとしての活動は、日本ハムのファンと一緒に河川の清掃活動を行ったり、ウオーキングを行ったりと地味なものも多い。一方で、20年東京オリンピックが最大の目標となる代表監督という仕事は、注目度が高いぶん、プレッシャーも大きいだろう。2つの仕事を同じ目線で捉えている稲葉SCOが、それぞれの場所でどんな仕事をやってのけるのか、楽しみだ。【日本ハム担当 中島宙恵】