今季、ソフトバンクは「本拠地九州移転30周年」を迎えている。ヤフオクドームのビジョンでは福岡にゆかりのある歌手、タレントが登場し「いざゆけ若鷹軍団」を少しずつ歌う30周年バージョンが流れている。マツダスタジアムや甲子園などに続く、流行に乗ったものだ。

この30周年にぜひ復活してほしい曲がダイエーホークスの球団歌「ダイヤモンドの鷹」。歌うのは歌手の宇崎竜童が率いる竜童組。作詞した阿久悠さんは西武の球団歌「地平を駆ける獅子を見た」に続く2球団目だ。

移転1年目、89年シーズンのファンブックで、阿久悠さんは『球団歌のパターンに当てはまらない斬新なイメージで詞をつくりました』『この曲は決して歌いやすいとは思いません。ビートとリズムが複雑で入り組んでいますからね』『とびきりファンキーでビビットな曲に仕上がったと自負しています』(すべて89年ダイエーホークスファンブックより)と語っている。

89年1月19日、ホークスの監督、選手、スタッフ総勢210人がチャーター機で伊丹空港から福岡空港に降り立った。エメラルドグリーンのジャケットを着た集団が機内から降りてきた光景は、当時中学2年だった記者も鮮明に覚えている。

森浩之ヘッドコーチは当時プロ3年目だった。「やっと福岡に来たんだな。九州人になるんだなとね」と胸を高鳴らせたという。「ダイヤモンドの鷹」のことを聞くと「ああ、あったあった。みんなで歌ったよ」とリズムを取り口ずさんだ。お披露目会場で選手たちも歌詞カードを見ながら歌ったという。

「ライオンズに出て行かれた福岡のファンの手放さないという熱い思いを感じた」。歌を思い出すと同時に当時のファンの歓迎ぶりなども鮮明によみがえってきたようだ。歌詞の「We are the champions」は、当時はBクラスばかりの弱小チームには刺激的だった。「そのころはチャンピオンになるとは思えなかった。王球団会長が(95年に)監督になってから変わってきたね」。過去5年で4度の日本一。今では「チャンピオン」と歌っても恥ずかしくないチームとなった。

当時、観戦に行くと平和台球場の外で開門を待っている間、スピーカーからずっと繰り返し鳴り響いていたのを覚えている。ほかにも子門真人の「ホークスタウン物語」は福岡ドーム(現ヤフオクドーム)が完成したばかりのころ球場に流れていた。島倉千代子の「それ行けダイエーホークス音頭」などあまり知られていない歌もある。

今でも南海ユニホーム復刻の試合では南海時代の歌を流している。前身のダイエーの曲も大事な球団の財産だ。森ヘッドのように曲を耳にして当時を思い出すファンも多いだろう。若い世代が聞くとどう感じるだろう。歌でホークスの歴史を振り返るのも味がある。【ソフトバンク担当 石橋隆雄】