イソップ寓話に「ウサギとカメ」という物語がある。たぶん、誰もが知っている話だろう。足の速いウサギと足の遅いカメが競争する、というやつだ。快足ウサギ君は途中で居眠りしてしまい、結果的に鈍足のカメが着実に1歩1歩を踏みしめて勝利を収める-。物語には「教訓」があって、ウサギの「油断」「過信」とカメの「愚直さ」「堅実さ」が対照的に書き込まれている。

さて、この日も勝利を収めてソフトバンクは連勝を「7」に伸ばした。グラシアルの2発にエース千賀の粘投。エースと主軸が活躍すれば勝利の確率はグーンと上がるのも当然だが、先発メンバーは今季初のオーダーを組んだ。前日までの明石に代え、1番二塁に周東、遊撃も高田から牧原に代えて臨んでいた。「疲労度を考慮した」。試合前に工藤監督はそう説明した。接戦も覚悟していたはずだ。連勝街道を走って少しばかりの気持ちの余裕も新布陣で挑む理由の1つだったかもしれない。

ウサギに「油断」はなかったのである。「愚直」なまでに走った。「ウサギとカメ」の物語でいえば、ウサギは疾駆を続けたのだ。1番起用の周東は初回の1打席目にいきなり左中間三塁打を放った。スタメン起用に快足を飛ばして先制のホームを踏んだ。好調グラシアルが2発5打点でリードを保ったまま白星を重ねた。牧原も1安打したし、6番から3番に上がった内川も先制打を含む2安打。攻撃布陣は代わっても仕事ぶりは変わらずだった。

故障者が続出している現状だが、チーム内の競争は激しい。周東らの活躍に明石、高田も発奮しないわけにはいかない。ましてや今宮、柳田、中村晃の主力陣が戦線復帰となればさらに、チーム内競争は高まる。故障禍という窮地を逆手に取った手綱さばきならば、見事と言うしかない。【ソフトバンク担当 佐竹英治】