ぼくは泣いていた。あるアイドルの無観客配信ライブでラスト曲の最後の大サビにさしかかったところだった。新型コロナウイルスの影響であらゆるイベントが中止、延期になるなど世間に悲しみがあふれる中で、目の前にいない“観客”に声をかけながら、汗を飛ばし笑顔を振りまくメンバーたちの姿から「何かしたい」という熱い気持ちが伝わってきた。少しお酒が入っていたことも影響したのか、本来は元気が出る歌なのに勝手に感情があふれ出した。思えばこのとき初めて、今のプロ野球ファンの気持ちが理解できたような気がする。
プロ野球も開幕延期が決定し、今は無観客のオープン戦を戦っている。自身もアイドルファンであるソフトバンク石川柊太投手は無観客オープン戦が決まったときに「SNSの出番か」とSNSで発信した。その意図を聞くと「ぼくが逆の立場だったら、絶対にさみしいですから」と教えてくれた。
石川は「何かやりたいけど、個人ではなかなかできることがないんですよね。球団主導で、何かできればいいんですが。ニコニコ動画みたいにコメントしながら試合を見たい、という声などを聞いたりするんですよ」と現状を明かす。
石川が応援するアイドルグループ「ももいろクローバーZ」もイベントの延期があったりする中で、配信での活動を行った。他にもさまざまなアイドルやアーティスト、声優がSNSなどでファンと交流する動きが増えている。石川も「何か動くことが大事ですよね。ライブの方がいいですけど、何かやってくれるという気持ちがうれしい」と心を打たれていた。プロ野球界でこの期間中に新しい動きが出てくることは難しいかもしれない。ただそういう思いを持っている選手がいることは確かだ。
野球は無観客でも、テレビや配信でプレーする姿を届けることができる。石川もうなずいた。「ぼくらはプレーするのがメインですからね。そこで見せていけたらと思います」と力を込めた。離れていても人を元気づけたり、感動を与えたりできる。それがアイドルであり、プロ野球選手だ。あらためてその力に気づかされた。【ソフトバンク担当=山本大地】




