中日のダヤン・ビシエド内野手(31)が、沖縄・読谷村での2軍キャンプでフリー打撃を再開させた。昨年10月28日阪神戦(甲子園)の一塁守備で打球に飛び込んで左肩を脱臼。リハビリを続けてきたが、そのことを忘れさせる全快ぶり。約3カ月ぶりのスイングでいきなり柵越えも放ち、開幕OKをアピールした。

打撃ケージの後ろから視察していた仁村2軍監督は目を細めた。「ケガの功名だね。左肘のたたみ方が良くなっている。内角球のさばきが良くなるはず。私も(脱臼の)経験があるけど、内角球を腰の回転で打てるようになる」。

ビシエドの弱点は内角だ。他球団の投手たちはそこを厳しく攻めてくる。昨年までの来日5年間で通算死球は50。ここ3年はぶつけられたランキングで毎年リーグ3傑に入っている。17年8月には右腕に死球を受け、尺骨骨折でその後のシーズンを棒に振った。昨季も開幕1カ月で9本塁打と好スタートを切ったが、7月21日巨人戦(ナゴヤドーム)で死球を受けて1試合欠場してから一時、バットは湿った。

18年に首位打者と最多安打、19年はベストナインに輝いた。昨年は一塁手でわずか1失策で初めてゴールデングラブ賞を受賞したが、脱臼がなければ打点王の可能性も残していた。仁村監督は「今年はかなり打てると思うよ」とほくそ笑む。

昨季の中日のチーム総得点は両リーグワーストの429点。10年ぶりのV奪回に向けて機動力アップをテーマに掲げている。主砲の弱点が減れば、相手投手陣による打線全体の攻め方もより慎重になる。ビシエドの脱臼が、何やらカギを握っているような気がしてならない。【中日担当=伊東大介】