南海の楽園が静かな球春を迎えた。ロッテの石垣島1軍キャンプは12日に終わり、25日には2軍キャンプも打ち上げになる。

12球団最速で無観客キャンプの実施が決まった。池間真裕子さん(43)は「そうなるだろうとは思ってたけど、ショックはあったかな」とその時を振り返る。夫の顕市さん(43)と島の中心街で「沖縄居酒屋 石垣島」を営んでいる。

名前の通り琉球料理が自慢で、例年2月は観光客でにぎわう。ロッテファンや選手たちにも知られる店だ。その観光客が、ロッテファンが、今年は島に来ない。「なんかゴーストタウンみたいで。商売をやめた方々もいます」。

夏や秋には島内でクラスターも発生した。危険水域だった時期もある。石垣市の中山義隆市長(53)は神妙に話した。「感染者がこれ以上増えると、島の医療体制が切迫して、医療崩壊しかねない状況でした。無観客キャンプはやむを得なくです」。池間さんも含めて、市民は「今回は仕方ない」の声ばかりだった。

観光客が減る冬に、ロッテキャンプ開催は島にとって大きい。りゅうぎん総合研究所の調査では、昨年の沖縄県全体のプロ野球キャンプでの経済効果は121億6800万円。「1球団あたり十数億円としても、石垣島は宿泊が必要。本島より波及効果は大きいと思います」と市長。それが一気になくなった。

池間さんは「あがいても人は来ないから」と現実を受け入れる。SNSで島の今を伝えながら、遠く離れたロッテファンたちと交流する。「年に1度再会できる皆さんなので本当に寂しいですよ。でも逆に、つながりは強くなるんじゃないかな」。また来年。満天の星空の下、懐かしい顔ぶれを待っている。【ロッテ担当=金子真仁】