往年のパ・リーグ党よ集まれ! 全国でも珍しいパ・リーグ専門居酒屋、奈良市の「ビークレイジー」では、5月から7月にかけて往年の4人の名選手を呼び、トークショーを行う。

浅川悟店長(48)は自身のことを「近鉄難民」と言い表す。子供の頃から、家族ぐるみで近鉄ファンだった。テストの答案用紙の裏に猛牛マークを描き、先生を苦笑させていたというから筋金入りだ。会社員をしていた04年、愛する球団がオリックスと合併するという報道にがくぜんとした。翌日に本社を訪ね、辞表を提出。理由を尋ねた会社側に「仕事の選択肢はいくらでもあります。でも近鉄バファローズは、ほかにはありません。残り試合を全部見たいのです」と説得したという。ふるさとのような球団は、もうこの世にない。帰る場所を失ったファンの心境を「難民」と表現する。

球団がなくなってからも、猛牛愛はまったく衰えない。むしろ強まっていった。「近鉄というすばらしいチームを、後のファンに伝えていきたい。そんな場所を作ってみたい」。資金を集め18年春、開店にこぎ着けた。

当初は近鉄グッズだけを並べていたが、19年末に転機が訪れる。ダイエー・ソフトバンクとロッテで145本塁打を放ったフリオ・ズレータ氏が来日した際、日本プロ野球外国人OB選手会(JRFPA)から「イベントを開かせてほしい」と連絡が来た。全国からホークスとマリーンズのファンが集結。双方が声を合わせ、応援歌を大合唱した。また、20年末には、阪急の名スイッチヒッターだった松永浩美氏のイベントも行った。フェイスブックで友達になったのがきっかけだった。キャンセル待ちが13人も出る盛況だったという。

1950年(昭25)のパ・リーグ発足から、そのままの名称で残っている球団はひとつもない。「ここがセ・リーグとの大きな違いです。関西の元阪急、南海、近鉄ファン。東京の日本ハムファン、そして福岡のライオンズファン。愛する球団の垣根を越え、一瞬にして皆さんがひとつになる瞬間を何度も見てきました」と浅川さんは語る。

懐かしいあの球団を応援することは、もう2度とできない。まばらなスタンドに響く、鐘と太鼓と三三七拍子。現在の隆盛からは考えられない独自の文化は、古都奈良で脈々と生き続けているのだ。

〈トークショー日程〉

◆5月29日=駒田徳広氏(元巨人、横浜)元近鉄加藤哲郎氏と懇意な縁で開催

◆6月19日=初芝清氏(元ロッテ)

◆6月26日=高橋慶彦氏(元広島、ロッテ、阪神)

◆7月10日=山本和範氏(元近鉄、ダイエー)

いずれもトークショー、サイン会、撮影会。飲み放題つき。

各日とも13~15時、16~18時の2部制。定員はそれぞれ20人。参加費は駒田・山本氏は1万円、初芝・高橋氏は9000円。問い合わせはビークレイジー(奈良市富雄元町2の1の17 弘徳ビル202)電話0742・81・8861。https://b-crazy.raku-uru.jp

【記録=高野勲】