憧れ続けた甲子園の空気を目いっぱい吸い込んだ。14日ウエスタン・リーグ広島戦で、ひそかに夢をかなえた男がいた。

高寺望夢(のぞむ)、18歳。昨年阪神にドラフト7位で指名された新人内野手は「8番三塁」で先発。安打こそ出なかったが、2度の守備機会を無難にこなし、初めて試合でプレーする聖地の雰囲気を存分に味わった。「甲子園でやるので、絶対に結果を出したかったんですけど」と本音は隠せなかったが、「しっかりいい球場でできて、楽しくできました」と初々しく振り返った。

実は、“甲子園体験ツアー”には参加していた。3月14日のオープン戦(巨人戦)で1軍に合流。出場機会はなかったが、練習に参加し、将来のレギュラー候補生として経験を積んだ。試合前の円陣では声出し役も担当。「少しでも早く戦力として戦っていけるように頑張りたいです」。当時の言葉通り、1軍の戦力となるべく汗を流す日々だ。

5月14日時点で、ウエスタン・リーグで34試合を終え、26試合に出場。先発は22試合で本職の遊撃に加え、三塁でも経験を積む。打率2割9厘と「プロの壁」に苦しむが、11日オリックス戦(オセアンBS)で、出場7試合ぶりの安打となる右翼への三塁打を放つなど、高校通算31本塁打のポテンシャルは健在だ。

「打ち続けて(ウエスタンで)3割以上を目標に。小さくまとまりたくないので、中距離打者みたいな感じで。たまには長打もあるような打者になりたい」

3月の開幕戦前には、将来像をこう語っていた。上田西では3年間、甲子園に縁がなかった18歳。憧れ続けた聖地でのプレーを糧に、大きく育つ。【阪神担当=中野椋】


◆高寺望夢(たかてら・のぞむ)2002年10月17日、長野県生まれ。上田西で高校通算31本塁打も甲子園出場はなし。プロ志望高校生合同練習会のシート打撃で5安打を放ち猛アピール。20年ドラフト7位で阪神に入団。新入団選手の体力測定では、3種目でトップの数値を記録した。178センチ、75キロ。右投げ左打ち。背番号67。