マウンドに立てる喜びを、1球ずつかみしめる。オリックス竹安大知投手(26)は15日楽天戦(ほっともっと神戸)で好救援し、今季2勝目をゲットした。

6回にマウンドに上がって3者凡退。その裏に吉田正が起死回生の逆転3ランを放ってくれた。テンポの良い投球で攻撃にいい流れをつなげ、自らにも白星が転がり込んできた。

常々「自分の生命線はコントロール」と話す26歳右腕は先発、救援どちらも対応可能。最近は主に6回、7回を任されている。「ロング(要員)でブルペンにいるのは分かっているので。毎日『今日あるかも』の意識はある。(僅差など)緊迫した場面で行けるのは本当にありがたいです」。竹安がそう晴れやかな表情で話すのには、それなりのバックボーンがあるからだ。

紆余(うよ)曲折の野球人生。ボロボロだった右肘は壮絶なリハビリを終えて強くなった。熊本ゴールデンラークス時代の14年にトミー・ジョン手術を受け、阪神からオリックスに移籍して1年目の19年には「右肘尺骨神経前方移行術」も受けた。「皮膚を切って開いて神経をずらしました。カッターで切るのと同じぐらいだから大丈夫」。耳をふさぎたくなるような話だが、当の本人は「肩さえ(痛みが)なければ問題なくいける感じだった」と声を弾ませて振り返る。

「実は…痛みが5年ぐらい続いていたんです。神経のことだとかは何も分かってなくて。トミー・ジョン(手術)をしたらこんな感じなのかとずっと思っていた」

最初の手術からの5年は違和感を抱えながら投げていたという。そして19年。「投げるときに手のしびれがあった。思い切り投げると『ぴりっ』って毎回」。チームトレーナーに相談して手術に踏み切った。「今は不安なく野球ができている。肩肘、問題なくできているのはプロに入って初めてじゃないかな」。

リハビリ期間に鍛えた体の状態も良い。これまでは140キロ中盤から後半の直球とキレのある変化球で勝負してきたが、今季は自己最速の152キロを計測するまでに。「今までと感覚が違う。宮崎キャンプから150キロも出ていたし、いつかは最速が出るかなと思っていた。肩肘に何の不安もなく投げられている」。万全の状態になって「痛みもなく、何も考えずに腕が振れている分…」と新しい悩みも出てきた。

「力が制御できていないときがあった。今まで経験したことのない出力になっているので、コントロールができてない」

その制球面の課題を竹安はウイットの効いた表現と笑顔で語る。

「良い車に乗っているのにドライバーが下手な状態。微調整しないと。今はボーンと思い切りアクセルを踏んでる感じ。馬力のある車でもスムーズにいきたいよね」

地道なメンテナンスを終えたから、毎日、野球ができる。【オリックス担当=真柴健】