なかなか遭遇しない場面に感動し、うらやましくもなった。6月19日、ペイペイドームで行われたソフトバンク戦で、日本ハム高浜祐仁内野手(24)と浅間大基外野手(25)のアベック弾が飛び出したのだ。ただのアベック弾ではない。2人は神奈川・横浜高の同級生。ともに高卒で、7度目のシーズンを1軍で過ごしている。
将来を嘱望され入団した浅間は、度重なる故障に悩まされ、定位置を獲得できない状況が続いた。一方の高浜は19年オフに育成落ちを経験した苦労人だ。1軍で初めてアベック弾を放った2人は、試合後の取材で、こう思いを口にした。
高浜 大基がどう思っているかは分からないですけど、大基が打つと、僕も打とうと思う。
浅間 2人で打てたらいいなと思っていたんですけど、いざ実現すると何とも言えない感情。本当にうれしいです。
これまで2人を指導してきた関係者へ、この上ない恩返しになったのではないだろうか。
この日は「父の日」の前日だった。佐賀出身の高浜の父晋一さんは、高校、大学と九州でプレー。「自分ではプロに行けたとか言っている。今でも諦めていないらしいです。動けるような体形じゃないのに」。高浜はそう言って笑ったが、育成からはい上がった不屈の魂は、遺伝なのかも知れない。ちなみに、この試合の前日、父からは「初球から振って行け」と激励され、本当に初球をスタンドへ運んでしまった。見事な3ランだった。
話を冒頭に戻そう。ともにプロ入りを目指し、切磋琢磨(せっさたくま)してきた2人のライバル物語は、これからも、まだまだ続く。浅間は「1軍で2人で活躍できたのは自信にもなる。何回もこういう結果を出して行けたら」。最下位に沈むチームで、スター候補生たちが光り始めている。【日本ハム担当=中島宙恵】