浮き上がる直球。タイミングを外され打者が崩れ落ちるようなドロップ。スピード感のある守備。

21日、1次リーグでコールド発進したソフトボール日本代表の試合に見入った。そこでふと、野球部だった高校時代、レギュラーで守備のうまかった遊撃と中堅の2人が、小学校までソフトボールをプレーしていたことを思い出した。

阪神にもいないだろうか。調べたら想像以上にいた。投手では中田、高橋、川原、岩田将。野手では片山、小幡、井上、江越…。小学校途中で軟式野球に転向した選手もいれば、小学校6年間はソフトボールをプレーし、中学で硬式野球に転向した選手もいた。

福岡の「吉塚クリッパーズ」で全国8強にも輝き、小学校6年間で主に一塁手を務めた育成ドラフト1位岩田将貴投手(23)は、その“メリット”を語る。

「距離感ですね。ソフトボールはバッターと投手が近いんで、それで速い球に目を慣らすことができる。中学入った時に距離も遠いし、ピッチャーのタイミングも違うから『意外と球遅いな』ってなりました」

ホームベースからピッチャーマウンドまでの距離は、野球の18・44メートルに対し、5メートルほど短い13・11メートル。ソフトボールでトップクラスの投手が投じる120キロの速球は、打者の体感速度170キロ程度に匹敵するという。小学生で120キロを投げる投手はいないと思うが、岩田将の言葉にも納得できる。

さらに守備面でも、野球にプラスに働くことがあるという。

「自分の周りにはソフトボールで投手だったけど、中学で野手になった選手がいました。その場合は守備がうまくなるんです。(ソフトボールは)塁間が短くすぐ投げないといけないし、打球反応がめちゃめちゃ良くなる。それは今も生かされていますね。大きいボールを小さい頃から体全体を使って投げるんで、肩も強くなりました」

同じくソフトボール出身の片山雄哉捕手(27)も、守備の違いについて力を込める。

「塁間が短いですし、早くやらないと小学生とはいえ間に合わない。ある意味雑じゃないですけど、俊敏さっていうのは、やってたからこそ身についた。(ソフトボールをやって有利な点は)あると思いますね。やってて良かったと思います」

懸念点は「中学で野球に転向した時に順応できるのか」という点だが「そこは問題ない」と両者は口をそろえた。のちにプロ野球選手になるレベルだから、センスの高さによる部分もあると思う。ただ、プロ野球選手の口から聞けたからこそ、高校時代のあの2人の守備センスの高さに納得がいった。ソフトボール出身のプロ野球選手にこれからも注目したい。【阪神担当=中野椋】

片山雄哉(2020年2月4日撮影)
片山雄哉(2020年2月4日撮影)