思わず双眼鏡を借りた。記者席から見届けた試合前練習。遠目で確認できたのは、背番号8だった。14日に出場選手登録を抹消されていたオリックス後藤駿太外野手(28)が、15日からの日本ハム3連戦(札幌ドーム)に同行している。

15日は、ラオウ杉本が決勝32号3ランを放ち、先発山崎颯が今季2勝目をマーク。試合後の取材に向かうと、練習着姿の後藤がナインに「ナイスゲーム!」と明るい声をかけ、ハイタッチを繰り返していた。

出場選手登録を外れているため、ベンチ入りはできない。ただ、試合前練習や、試合後にチームを鼓舞し、雰囲気をつくっている。

オリックスは、優勝争いまっただ中。そんな10月上旬、後藤に話を聞いた。

「中堅、ベテランが盛り上げることができたら、若い選手も乗ってきてくれると思う。プロの世界なので『よっしゃ、いこうぜ!』と言ったところで、それが効かない場合もあるんですけど…。でも、僕にできることは精いっぱいやる。一気にワァッと行ける選手もいる。そこの見極めはしっかりしています」。

今季は主に代走や守備固めで55試合に出場。試合に出ないタイミングでも、チームのために動いている。「僕は試合の終盤で出ることが多いので、スタメンで行く選手の緊張を和らげてあげられるか、なんです」。28歳。11年間オリックスでプレーしており、愛着もある。

「僕は11年間、チームに居させてもらって、勝ってる時期(14年)も知ってるし、苦しい時期も知っている。『よくオリックスは負けてる』とか『弱い』とか。そういう声も聞こえてきてましたけど…ね」

しんみりと言葉を続ける。「今のメンバーって怖いもの知らずだと思うんです。野手で言えば、ラオウ(杉本)が覚醒して、福田がセンターを守って、宗がサードで、正尚もいる。『オリックスは強い!』と思ってやっている選手がたくさんいるんです」。

イケイケな雰囲気作りに徹するが「のみ込まれてますよ、僕も。今年のレギュラー陣の存在は本当に大きい。僕ができることは本当に少しなので。そこを一生懸命やっていくだけです」と悲願Vに貢献する。

全員で勝つ-。双眼鏡でのぞく世界が、じんわりぬれた。【オリックス担当 真柴健】