遊軍記者として複数球団を取材していると、この時期に優勝争いをしているチームには勢いや底力を感じる。特にヤクルトの主砲・村上宗隆内野手(21)の存在感は見た目の雰囲気だけでなく、数字にもしっかりと表れている。

村上の四球数は21日現在「102」でリーグ1位。同2位の広島鈴木誠の84を大きく上回り、楽天浅村の100も超えて12球団トップだ。打率2割7分8厘は高くないが、四球の多さもあり出塁率は4割8厘。長打率は5割7分5厘で、メジャーで強打者の指標となるOPS(出塁率+長打率)は0・983でリーグ3位(同1位は鈴木誠の1・086。2位はDeNAオースティンの1・006)。「1」を超えれば超一流とされる指標で、高水準をマークしている。ちなみに終盤の敬遠の多さでも注目されたエンゼルス大谷の四球数は96、OPSは0・965だった。

私が直近で取材した15日巨人戦(神宮)でも、村上はきっちり3四球を選んでチャンスメーク。前に走者がいようがいまいが、厳しいところを突かれ、勝負を避けられるケースも多い。対峙(たいじ)する相手投手に与える重圧も想像以上のものだろう。

一方で強打者の宿命とも言えるが、村上には三振が多いイメージもある。2年目にして36本塁打を放った19年にはリーグ記録の184三振を喫した。当時は「それは(三振は)したくないですよ。できるもんなら。少なくできるように技術も上げていかないと」と話しており、20年は115にまで減少した。今季はここまでリーグ2位の127三振と増加はしているが、四球も多いためか、かつてほどは三振のイメージも少なくなったと思う。スタンドや記者席から見ていても「風格」や成長を感じさせるスラッガーだ。

優勝マジック3のヤクルト。村上が残り5試合で本塁打だけでなく、どれだけ四球を積み重ねるかにも注目してみたい。【遊軍=鈴木正章】