阪神ドラフト6位の豊田寛外野手(24=日立製作所)にとって、わずか、それでいて大切な9打席だった。

「自分の力不足を改めて実感しました」。その現実を真っすぐに受け止めている。

さかのぼること1カ月。豊田は開幕2軍スタートとなり、3月30日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク戦に「7番中堅」で初先発した。第1打席。変化球を完璧に捉えた打球は左翼に飛び、初安打は本塁打となった。好スタートを切った。

その頃、1軍は開幕からまだ勝ち星がなく、2軍戦で打率3割8厘と好調の豊田にチャンスが巡ってきた。4月3日に1軍初昇格。その日は巨人との「伝統の一戦」。5回2死でデビューを迎えた。先発ガンケルの代打で打席に立ち、相手のルーキー赤星のフォークに空振り三振だった。その後も4試合に出場したが、Hランプをともせなかった。

2度の先発を含む5試合に出て、4三振、1四球、1犠打、併殺打を含む凡打は3つ。2軍落ちが決まった。1軍の投手たちに歯が立たず「今までで対戦してきた投手と球のキレが全然違った」と悔しい表情だった。

降格する前、矢野監督からこう言われた。「真っすぐを打てるようにしろ」。その言葉が心に残った。21日から2軍に合流し、ウエスタン・リーグ広島戦に「8番中堅」で即先発。1打席目の初球を捉え、鬱憤(うっぷん)を晴らすように中前打を放った。「自分の持ち味は積極的な打撃だと思う。初球からどんどん振ること」。1軍初安打はお預けとなったが、やるべきことが見えた。

「自分の力不足」と正直に話してくれ、自分もハッとする部分があった。10打席目の豊田はきっと違う姿になっていると思う。虎番1年目の自分も、負けていられない。【阪神担当 三宅ひとみ】

2022年4月3日 巨人対阪神 5回表2死、ガンケルの代打で打席に向かう豊田(左)
2022年4月3日 巨人対阪神 5回表2死、ガンケルの代打で打席に向かう豊田(左)