派手さはなくても堅実な守備は、十分に魅力がある。日本ハム上野響平内野手(21)は、人をひきつける守備力を持っている。プロ3年目の今季、うれしい初安打を記録した。ただ、節目の一打以上に華麗なグラブさばきで完成させた併殺は、大いにファンを沸かせた。

BIGBOSSこと新庄剛志監督(50)も、魅了されている1人だ。打撃力を伸ばし、元ヤクルト宮本慎也氏(日刊スポーツ評論家)のように育って欲しいと期待を寄せている。「(宮本氏は)僕、守っていて嫌でしたもん。速い球は右方向に打つけど、カーブが行った時はガツンと引っ張る。ものすごく考えさせられる打者」。上野には、その可能性があると感じさせている。

京都国際から19年ドラフト3位で入団。当初から守備には定評があった。原点は母校のグラウンドにある。上野は「みにくいグラウンドだったんです」と苦笑いする。大小の石ころが無数に転がっているという厳しい環境。足を動かし体の正面で捕球しないと、イレギュラーを連発してしまうという。そんなコンディションで3年間プレーしたことで、プロでも通用する武器を磨き上げた。

より持ち味を引き出すため、昨年はグラブを新調した。「手で捕る感覚を強くするため」と手のひらからプラス1センチほど、サイズを小さくした。

メンタル強化にも積極的に励んだ。1年目はプロの世界に圧倒された。「テレビで見る選手ばかりで、緊張しすぎてプレーに影響を及ぼしていた」。あまりの失策の多さに、寝込むこともあった。

5月4日に出場選手登録を抹消され、現在は2軍で再調整中だ。心身で成長を遂げ、再び内野の定位置争いに加わる日を待っている。【日本ハム担当 田中彩友美】