「スターへの階段を上がる」という表現がある。26日から2試合行われるマイナビオールスターゲーム2022(26日=ペイペイドーム、27日=松山)はまさにスターへの階段といえる舞台だろう。

11年ぶりにファン投票選出なしとなった広島からは、監督推薦で3選手が出場する。初出場は坂倉将吾捕手(24)。“板倉(いたくら)”ではなく、“坂倉(さかくら)”だ。広島では今季、三塁を主戦場とするも、本職の捕手での選出となった。ようやく全国区だ。アマチュア時代は日本代表に縁がなく、日大三時代は甲子園出場もかなわなかった。今年3月に予定された台湾との強化試合(中止)も、春季キャンプ前の負傷離脱によって選考外だった。

「小、中、高と“地域では”とか“東京では”というレベルで、名前が知られていた程度。目立たない選手でした。JAPANにも無縁だったから、プロでは(アマチュア時代から)有名な選手よりも早く、早く上がりたいという思いが強かった」

ドラフト4位で入団して、1年目に1軍デビューを果たした。広島の高卒新人捕手の1軍安打は、65年の衣笠以来2人目の記録だった。持ち前の打力で自身のポジションをつかむと、昨年は捕手と一塁の併用でリーグ2位の打率3割1分5厘を残した。今季は新境地の三塁を主に3割超の打率を維持する。

全セの注目選手、佐藤輝明(阪神)と牧秀悟(DeNA)は同学年だ。高卒で着実に成長してきた坂倉に対し、2選手は大卒1年目の昨季にブレーク。ファン投票選出の両者と比べれば、注目度が劣るかも知れない。ただ、それもまた、坂倉らしい。

「注目されるのは苦手なので、陰に隠れて、活躍したいと思います」

“陰に隠れる”だけでなく、しっかりと“活躍したい”という思いを言葉にした。坂倉の全国デビュー。全国区への第1歩が、世界へ向けた1歩となるかもしれない。【広島担当=前原淳】