1球にかける執念が、打席から伝わる。オリックス西野真弘内野手(32)が、懸命に歯を食いしばっている。

「去年、チームは優勝したけど、自分はほとんど何もできなかった。本当に力になれなかったシーズンだった。だから、今年こそチームに貢献できるように。必死です」

昨季はプロ最少の出場18試合にとどまった。今季で8年目の32歳は「ここが今、大事なところ。悔しい思いはもちろんある」とシーズン最終盤、1軍で躍動している。

打席の中で西野は1球1球、バットの握りを変える。「相手投手や、その日の自分の調子です。相手投手の特徴と、カウント。状況。特に2ストライク後は短く持って、操作性を重視しています」。パターンは<1>拳1つ分短く持つ<2>指2本分短く持つ<3>目いっぱい長く持つの3つあり、その場で判断する。

「バットを長く持つのと、短く持つのは、ちょっと変わる。例えば、ファウルにする、コンタクトを意識して打球を飛ばす。(意識は)出塁すること。ヒットが一番良いけど、四球でもなんでも塁に出ること」

集中を研ぎ澄ませ、バットを構える。今季の代打成績は11打数6安打の打率5割4分5厘と結果を残している。ファーム生活を経験したからこそ「今、楽しいよね、野球。苦しく野球やっても仕方ない。楽しもうと自分で意識している」と前だけを見る。

「心から楽しんでプレーすること。苦しい顔をしてプレーしてもしんどいだけ。(表情が)暗くなると、体も硬くなる。自分の好きな野球で、こうして楽しく毎日プレーさせてもらっている。とにかく、それが良いプレーにつながる」

与えられる打席に、喜びを感じる。「緊張を楽しむ。そういう舞台に立てる人って限られているから。それは、すごく感じるようになった。結果が出たら、仲間とヨッシャー! ってグータッチして…。今年は、その輪に入れるように貢献したい」。残り9試合。狙いを定め、その1球を捉える。【オリックス担当=真柴健】