WBCでメキシコ代表のランディ・アロザレーナ外野手(28=レイズ)がベストナインに選出された。侍ジャパンとの準決勝で岡本の大飛球をジャンピングキャッチし、“幻弾”にしたのは鮮烈だった。

試合を見ながらSNSをチェックしていると、アロザレーナ関連でトレンド入りした単語があった。「手塚ゾーン」。手塚ゾーンとは漫画「テニスの王子様」のキャラクター手塚国光が、打球に特殊な回転をかけ、相手がどう打ち返しても自分の定位置へ戻ってくるようにする常人離れした技のことだ。

準決勝は幻弾だけでなく、日本のチャンスでの打球がことごとくアロザレーナのグラブに吸い込まれた。よって「メキシコのレフトは手塚ゾーンの使い手!?」という文脈で多くつぶやかれていた。

ただ考えてみると、野手は事前に打球の回転を操ることはできない。すると左翼に“打たせている”のは投手の方、ということになる。厳密に言うと5回の幻弾と、同2死満塁の近藤の左飛&6回2死満塁の源田の左飛では投手が代わっている。8回山川の左犠飛の時もさらに継投しているので「使い手」は1人ではないことになるが…。

実際狙った箇所にドンピシャで打たせるのは困難だろう。でもゴロを多く打たせるグラウンドボールピッチャーや、フライアウトを量産する投手なら存在する。野球選手の中にも、もしかしたら? かつて手塚ゾーンに近いことをやろうとチャレンジした人がいるかもしれない。

最近はコロナ禍の取材規制が緩和され、雑談もできる環境になってきた。こういう緩めの話題も、出せば興味深い話が聞けるかもしれない。機会があれば、聞いてみようと思う。【遊軍=鎌田良美】

WBC準決勝の日本対メキシコ 5回裏日本無死、岡本の打球を好捕し、ドヤ顔するアロザレーナ(2023年3月20日撮影)
WBC準決勝の日本対メキシコ 5回裏日本無死、岡本の打球を好捕し、ドヤ顔するアロザレーナ(2023年3月20日撮影)