かつてのエースとの絆を感じた1日だった。1日の日本ハム-オリックス戦(エスコンフィールド)で、オリックスで長らくプレーしていた日本ハム金子千尋特命コーチ(39)の引退セレモニーが行われた。

「ファイナルピッチ」の審判役はオリックス比嘉幹基投手(40)、打者役は平野佳寿投手(39)だった。同学年の平野佳は練習開始前、ベンチにやってきた金子コーチから直接頼まれたが、実際に打席に立ったのは金子コーチの息子。「その後に、金子には内緒で交代するよって言われました。金子にサプライズって」。驚かせ喜ばせた粋な演出。バットを持ちながら、打席のすぐそばで盟友を見守り「元気そうにやっているので、また次のステージで頑張ってほしいなと思います」と表情を緩めた。

オリックスの選手たちがロッカールームに到着すると、前面にはオリックスのロゴ、背面に背番号19と「KANEKO」と書かれた特製Tシャツが全員分置かれていた。金子コーチからの贈り物を着用して練習を行った宗佑磨内野手(27)は、ともに戦っていた日々を思い返した。

「僕は外野だったので、金子さんがいる時は。ちょっと距離が遠かったんですけど、すごくいいピッチャーというのは入団前から知ってましたし、そんな選手と同じ球団でやれたのもすごい、いい経験になっている。すごく勉強になりました」

山崎福也投手(30)は、交流戦を見ていた金子コーチから「またヒット打ってたね」と言葉をかけられたという。「僕の中では入った頃の大エースというか。そういうイメージが強い。また雰囲気も変わっていて、ちょっと話しやすくなっていました」。久しぶりの再会を楽しんだ。

金子コーチが在籍していた頃のオリックスは、頂点が遠かった。それでも、苦しい時期を支えたエースがいたからこそ、今のチームがある。軌跡はずっと受け継がれていくはずだ。【オリックス担当=磯綾乃】

7月1日、日本ハム金子特命コーチの引退セレモニーでバットを手に登場する平野(撮影・佐藤翔太)
7月1日、日本ハム金子特命コーチの引退セレモニーでバットを手に登場する平野(撮影・佐藤翔太)
7月1日、オリックスベンチを訪れた日本ハム金子特命コーチ(左)は山崎福とグータッチを交わす(撮影・佐藤翔太)
7月1日、オリックスベンチを訪れた日本ハム金子特命コーチ(左)は山崎福とグータッチを交わす(撮影・佐藤翔太)