何事も“タイミング”が大切だ。「日本に来て最初に苦しんだのがタイミングをずらされることだった」とシーズン序盤、苦戦した広島マット・デビッドソン内野手(32)は異なるリーグへの適応の難しさを語っていた。だが、打席を多く重ねた後半戦は、すでに10本塁打、打率2割6分5厘と、離脱者相次ぐ打線をけん引している。6日DeNA戦では、来日2度目の4番で延長戦に終止符を打つサヨナラ弾で勝利に導いた。

首脳陣の我慢が花開かせた、とも言える。シーズン序盤は1発長打の魅力はあっても確実性が低く、打率1割台が長く続いた。若手の起用や2軍での再調整を推す声も聞かれていたが、新井監督は起用し続けた。首脳陣はスイング自体に可能性を感じており、日本球界に適応しようとする姿勢や助言を素直に聞き入れる姿もあって、我慢した。

空を切るスイングにも目をつぶることができたのは、足を引っ張らずに貢献できる守備力があったからだろう。守備が悪ければ、もっとチャンスは少なくなっていた。狭くない守備範囲に、打球反応もいい。柔らかいハンドリングで三塁だけでなく、一塁もこなす。手薄な三塁に加え、6月からはマクブルームが離脱した一塁でも起用されるようになり、出場の幅が広がったことも打席を与えられる一因となった。

打席を重ねながら徐々にタイミングを合わせていった打撃と違い、守備のタイミングは常にほぼ完璧。特に送球は、14歳頃まで打者より投手に軸を置き、米大リーグでも通算6試合に登板したキャリアがうなずける安心感がある。

2020年に所属したレッズが提携していたトレーニング施設「ドライブライン」に通ったことをきっかけに、キャッチボール前にはまず2つの重い球を投げて肩をつくる。開幕から続けるルーティンワークだ。

「重いボールを使うと、公式球が軽く感じ、スローイングの(球)数を減らすことができる」。

継続が安定感につながり、加えてバッテリーのサインや打者の傾向によって動くポジショニングが広島守備を引き締めた。

打撃開眼の裏には、安定した守備、送球がある!…。そんなコラムを書こうと試合前に取材したら、その日にまさかの大暴投。これまで見たことのないミスから決勝点を与え、ばつが悪い思いをした。改めて、タイミングの大切さを教えられたような気がした。【広島担当 前原淳】

6日DeNA戦の11回裏、デビッドソンはサヨナラ本塁打を放つ
6日DeNA戦の11回裏、デビッドソンはサヨナラ本塁打を放つ