「ハッピバースデートゥーユー」。8月9日バンテリンドームで行われた広島戦で、23歳の誕生日を迎えた中日高橋宏斗投手が2回の第1打席に入ると、右翼席からトランペットの演奏が始まった。

マウンド上の広島森下はグラブをはめずボールをこねこね。捕手坂倉は前へ出て、ホームベースを拭き拭きし演奏が終わるまで“時間稼ぎ”。高橋宏は森下にヘルメットを取り、一礼して再び打席に入った。敵味方なく一瞬、球場全体が祝福ムードとなった。

賛否両論は、もちろんあるだろう…。いや、待てよ、2シーズン後の27年からは、セ・リーグでも指名打者(DH)制が導入される。バースデー登板の投手はいつトランペットでお祝いされるようになるのだろう…

右翼席の応援を仕切る「中日ドラゴンズ応援団」の河瀬嶺次(れいじ)団長(30)に聞いてみた。「再来年のことなので、まだ何も決まっていません」と話してくれた。先発マウンドにあがる時はそれぞれ、お気に入りの登場曲で向かう。気持ちが最高潮になっているところで、演奏で間ができるのも、水を差す形になってしまう。そもそも、相手の攻撃中に、そのような演奏はできない。

高橋宏の場合、試合開始40分前に外野をランニングしてウォーミングアップしていた。その時に右翼の中日ファンだけでなく、左翼の広島ファンからも「おめでとう」の声と拍手が起きていた。このタイミングならと思ったが、鳴り物を許可されている私設応援団でも、演奏していい場面は決められており、勝手にはできないルールとなっている。

今でも打席に立たない中継ぎ投手が誕生日の場合は、勝利時に試合後、二次会として演奏する際に誕生日を祝うことはあるという。河瀬さんは「特に最近多いですが、あの(誕生日の演奏中の)時間は球場全体がひとつになっていいと思っています。今後、どうするのがいいのかを応援団内で話し合っていきたいと思います」と話してくれた。

ちなみに指名打者制のパ・リーグではどうしているのか。30年以上活動している、某球団の応援団のメンバーに聞いてみた。「うちの球団では、明確なルールはない。野手で、その日誕生日の選手が最初の打席に演奏する感じです。投手はやったことは…」と話す。やはり交流戦や日本シリーズで打席に立つ場合でないと、パ・リーグでも投手への演奏は難しいようだ。

2026年の8月9日は日曜日。来年も高橋宏が打席に立つ可能性はある。今年は8回無失点で見事白星をつかみ自分で祝った。同学年の金丸夢斗投手(22)は2月1日が誕生日。公式戦が開催される可能性はほぼない。「誕生日に登板って、ものすごくプレッシャーになると思うんで…あまり投げたくない」と笑った。

今季も残りわずか。来年で基本的に投手が打席に立つのは最後となる。27年からは見られなくなるシーンも、まだ探せば出てくるだろう。いろいろと探してみたい。【中日担当=石橋隆雄】