【前回】Aクラスへの「あと1勝」と西武に対する夏場以降の力負け。今季のロッテに足りなかった「ほんの少し」を探ろうと、宮崎の吉井投手コーチを訪ねると「あと1勝というより、よく3位争いできたと思う」との言葉が出てきた。

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吉井コーチが「少なくとも10勝」を計算していた石川は8勝。涌井は3勝。2桁勝利、規定投球回ともに達した投手がいなかった。

若手は輝きを放った。昨季まで未勝利の種市が8勝、岩下も5勝を挙げ先発ローテを回った。「キャンプの時点ではルーキーは無理だと思った」というが、ドラ3小島が終盤からローテに入り、ドラ2東妻、ドラ5中村稔も崩壊しかけた投手陣を下支えした。先発の谷間には土肥や佐々木が入るなど、まいた種が膨らみ、花を咲かせようとしている。ファンならずとも胸躍る陣容が整いつつある。

一方で吉井コーチは、来季へ必要不可欠な要素を勝利の方程式の固定だと感じていた。「リリーバーの整備は得意」と感じていたが「経験と配慮だけでどうにかなるものではない。もう1人足りなかった」と思い知らされた。

守護神は益田で固定されたが、肝心要の8回は定まらなかった。3連投を原則禁止するなどマネジメントを徹底したが、中継ぎ陣にどうしても穴があいた。「あと1勝」よりずっと先を見据え、可能性の感じた若手の中からセットアッパーを探そうとしている。

打者はどうか。千葉に戻り鳥越裕介ヘッドコーチ(48)に聞いた。チーム防御率が最下位の西武に対し、シーズン後半は接戦を落とす試合も目立った。あと1本が出ず、あと1勝に届かなかったのではないか。

鳥越ヘッド そこの1勝だけで考えてないから、どうだろう。たかだか、5割でしょ。もう終わったんで今更「何が」といっても。オレはそういう考え方をしないから分からない。そこじゃなくて、来年勝つために、もう始まってるから。

吉井コーチと同じで、長く勝負の世界、しかも強者の側にいた野球人の思考を持っている。あと1勝を追い求めているようでは、トップを狙えない。

鳥越ヘッド まあ、自分たちができると思っていないんじゃない? 己を信じ切れていない。そこが結果に直結した。これが実力。だから力をつけましょうということ。

確かにソフトバンク相手に4月の6戦で5勝1敗で勝った結果、17勝8敗という圧倒的な勝率を収めた。一方で西武へ苦手意識は知らずのうちに蓄積し、対戦成績は下降していった。

投手コーチは新たな原石を発掘するために宮崎へ。ヘッドコーチは千葉で厳しい言葉を言い続ける。「あと1勝」ではない。西武との「あと10勝」を埋めるため、動きだしている。(この項おわり)【久永壮真】