今年も多くの選手たちがプロの世界を去った。第2の人生へ踏み出す彼らを特集する「さよならプロ野球」を、全12回でお届けする。

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黒子に徹し、恩を返す-。阪神からプロで2度目の戦力外通告を受けて現役引退した山崎憲晴内野手(33)は、来季から球団スコアラーとして選手のサポート役に回る。

17年11月、阪神入団発表で、嶌村聡球団副本部長(左)から帽子をかぶせてもらう山崎憲晴
17年11月、阪神入団発表で、嶌村聡球団副本部長(左)から帽子をかぶせてもらう山崎憲晴

「一番つらい時にタイガースに拾ってもらった。僕はタイガースで現役を終えようと。次を探すとかはなく、そのままここで終わろうと決めていた」

08年ドラフト3位で横浜商大から横浜(現DeNA)に入団。内野全てと捕手を守れるユーティリティープレーヤーとして重宝された。しかし、16年に左膝を手術し、その影響などで17年オフに1度目の戦力外通告。トライアウトを受け、阪神から声がかかった。現役引退を決断した今も、当時の感謝は忘れない。「1番にタイガースから電話をもらった。鮮明に覚えている。あれよりうれしいことは、今までの人生の中でもない」。1度は途絶えかけたプロの道が再びつながった。移籍1年目の18年は開幕を1軍で迎え、32試合に出場。しかし、今季は若手の台頭もあって2試合にとどまった。オフに契約を更新しないと告げられた。

山崎の年度別成績
山崎の年度別成績

18年5月、巨人戦の8回表無死一、二塁、山崎憲晴は左前適時打を放ち、移籍後初打点を挙げる
18年5月、巨人戦の8回表無死一、二塁、山崎憲晴は左前適時打を放ち、移籍後初打点を挙げる

長年住んだ横浜を離れ、家族とともに移り住んで挑んだ阪神での2年。「本当にかけがえのない時間だった」と振り返り「現役に後悔はほとんどない。本当に、やりきったと思っている」とすっきりした顔で言った。

転身するスコアラーの仕事は投手の投げ方のくせ、配球傾向など打撃に生かすデータ分析に限らない。「僕の場合はバッティングだけじゃなく(野手の)打球方向であったり守備のことに関しても。両方の面でお世話になっていた」。現役を退いてすぐだからこそ、できるアドバイスもある。「映像では残らないところで、自分が伝えられることがあればいいなと」。グラウンドで得てきた感覚やフィーリングも、惜しみなく伝えていく。「存在感はいらない。自分が目立つことはないと思う。より、選手にやりやすい環境をつくってあげたい」。選手に寄り添って生きたデータ、助言を届けていく。【奥田隼人】

19年阪神退団選手(※は育成)
19年阪神退団選手(※は育成)