どの世界にも、超えなければならない先人がいる。お笑い界の若手が「第7世代」と言われ、活気づいているように、高校野球界にも新たな波が押し寄せようとしている。東海大相模・門馬敬治監督(50)を追う横浜・村田浩明監督(33)、大阪桐蔭・西谷監督を追う東大阪大柏原・土井健大監督(31)。高校野球界をリードする2人の監督に取って代わろうと、同地区の若手監督が虎視眈々(たんたん)と狙っている。

<横浜・村田浩明監督>

横浜・村田浩明監督
横浜・村田浩明監督

横浜の村田監督は7回、東海大相模が2-1と逆転する場面でつぶやいた。「アグレッシブベースボールですね」。16日、神奈川大会準々決勝で敗戦し、甲子園交流試合をテレビ観戦。「徹底して次の塁を狙う姿勢、攻撃的な守備。さすが門馬監督。自分だったら厳しいな」。大舞台での指揮に脱帽した。

若き日の門馬監督は、渡辺元監督率いる横浜を超えようとチームを作った。村田監督は就任前日の3月31日、東海大相模を訪れ門馬監督にあいさつ。伝統ある横浜を引き継ぎ、相模を追う立場となる覚悟だった。「村田君、横浜は強くあって欲しいんだよ」。門馬監督の言葉が胸に刺さった。

村田監督が高校2年夏、準決勝で東海大相模と対戦。くしくも、当時の門馬監督は、現在の村田監督と同じ33歳。2-0で横浜が勝利した。その後、門馬監督は何度も渡辺元監督に教えを請うたという。17年後、門馬監督は村田監督に説いた。「僕の野球は門馬野球じゃない。原貢野球を継承しているだけなんだよ」。先人の野球を引き継ぐ思いを教わった。

村田監督が目指すは渡辺元監督と小倉清一郎元部長が作り上げた緻密でスキのない野球。「もう1度、強い横浜を作って東海大相模に挑みたい」。歴史を引き継ぎ、目指す野球を見据えた。【保坂淑子】

<東大阪大柏原・土井健大監督>

東大阪大柏原・土井健大監督
東大阪大柏原・土井健大監督

元オリックス、巨人の東大阪大柏原・土井監督は、就任2年でまだ大阪桐蔭との対戦はない。「間違いなく圧倒されると思うけど、超えないと甲子園はない」。自身の高校進学時に大阪桐蔭への道もあったという。だが、兄昭大(しょうた)さん(37)と同じ履正社を選んだ。

「ナニワのミニラ」と呼ばれ06年春には同校初の選抜にも出場。「僕らのころはまだ履正社ってどこ? 何て読む? という感じだった」。岡田龍生監督(59)が昨夏初の全国制覇し、大阪桐蔭との2強と呼ばれるまでの姿を見てきた。

「当時、岡田先生に教えていただいたことを、かみ砕いてかみ砕いて、今風の教え方をしないと子どもたちの頭には入っていかない」。考える力があれば勝機は見えるという信念で、準備の大切さを伝える。就任当初は「明日の天気は?」と聞いても答えられる部員はいなかったが「1週間予報である程度、雨などを予測して自分で練習メニューも考えて」と教え続け、今では多くの部員が答えられるようになった。プロでは1軍出場なしに終わったが、その時の甘えや悔いなども、正直に部員たちに伝えている。勝利だけでなく人間力も鍛え、大阪の勢力図を変える野球部に育てていく。【石橋隆雄】