昨年、多くの有望なルーキーがプロの世界に入った。畑を耕し、種をまき、立派な実がなるのを願望したが、今年になって、新芽が出始めた。代表するのが、ロッテ佐々木朗希、ヤクルト奥川恭伸、オリックス宮城大弥の3人。それぞれ個性を持ち、将来、先発ローテをけん引する投手になって、日本球界を代表する投手になると確信する。

佐々木朗希(2021年6月10日撮影)
佐々木朗希(2021年6月10日撮影)

スケールとしてはNO・1の佐々木朗は、10日のヤクルト戦でセンスの高さを証明した。プロ初登板で課題に挙がったクイックの改善がみられた。具体的に言えば、体全体の動き、リズムが速くなった。大きなテークバックと足を高く上げるのが特徴で、バランスを崩さずにクイックを習得するのは至難の業と思ったが、想像をはるかに超えるスピードで進歩した。

周囲の人から、いろんなアドバイスを受けるだろう。人の話を聞く時は、自分の知識とは比べずにゼロの状態で聞き、自己判断でいいと思ったことはトライしてみればいい。奥川がコントロール、キレ、駆け引きを武器とするなら、佐々木朗はスピード。個性をいかに生かすかがプロで、真っすぐを表に出したゲーム運びで、とてつもない投手になることを期待する。

ヤクルトの奥川は、8日のロッテ戦で5回6失点と打ち込まれた。結果だけを見れば、残念に思った方が多いだろうが、私はむしろ、近い将来、チームを背負って立つ投手になると確信した。それだけの可能性を感じさせる投球だった。

ヤクルト奥川恭伸(2021年5月27日撮影)
ヤクルト奥川恭伸(2021年5月27日撮影)

何と言っても、投球の原点であるアウトローに各球種を全力でコントロールできることが素晴らしい。投手としての第1条件であるストライクを投げ、打者に向かっていく姿も見えた。2年目の今のところは、この精神を貫くべきだろう。多くを求めすぎれば、ストライクを投げることが怖くなる可能性がある。

では、将来的に勝つ投手になるにはどうするか。このゲームで見えた課題は、カウント球と決め球が同じだったことである。ただ単にストライクを投げていくだけでは、プロの打者には攻略される。カウントを稼ぐには見逃し、空振り、ファウルの3つの方法がある。ボールのまぜ方、攻め方を少しずつ勉強することを推奨する。

現状、3人の中では宮城が頭1つ抜けた投球を披露する。9日の巨人戦では、サンチェスと堂々の投げ合いで勝利した。フォーム的には2段モーションで背中がしっかりと立ち、力みもなく、軸の移動も狂わずに目標に向かって投げ込んでくる。マウンドの姿から「打てるものなら打ってみろ」の気迫も伝わった。

オリックス宮城大弥(2021年6月9日撮影)
オリックス宮城大弥(2021年6月9日撮影)

最も驚いたのは、投球内容だった。全ての投球がストライクゾーンで、誘い球がほとんどなかった。このような投球をプロ野球で見たのは、久しぶりだった。極め付きは抜群のコントロールで、ボールのキレも非常に良かった。この日の調子の良しあしはわからないが、すでに6勝を挙げる理由はわかった。

球種的にはそれほど多くなく、主に真っすぐと2種類のカーブのように見えた。今年は現状のままで十分だが、今後、ボールになる落ち球を操れるようになれば、一段とスケールアップする可能性を秘める。これから何勝するのか、今のピッチングにどのような枝葉を付けていくのかも非常に楽しみである。(次回は7月下旬掲載予定)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。