中日のエース大野雄大投手(32)が、初めて五輪(オリンピック)に出場する。昨季、国内FA権を封印してチーム残留を決めたおとこ気左腕。メジャー1500奪三振のパドレス・ダルビッシュ有も参考にしたという宝刀ツーシームに磨きをかけ、憧れの大舞台に挑む。

19年11月、プレミア12台湾戦で力投する大野雄
19年11月、プレミア12台湾戦で力投する大野雄

大野雄は、念願だった東京五輪メンバー選出の喜びをかみしめた。

「いつもの代表招集とはちょっと違う。日の丸を背負って戦うのは一緒ですが、五輪だとちょっと違うのかな。何が違うとは表現しにくいんですけど」

佛教大時代から世界を意識してきた。08年北京を最後に野球が五輪競技から外れたが、16年に東京での復活が決定。「(五輪で)野球があるんや。チャンスやなと思った」。10年ドラフト1位で中日に入団し、13年から3年連続2ケタ勝利を挙げた。初の開幕投手を務めた15年11月、第1回プレミア12で日本代表入り。ノーヒットノーランを達成し、初の最優秀防御率賞を獲得した19年にも、第2回プレミア12のメンバーに選ばれた。

同大会は20年に開催予定だった東京五輪の前哨戦。リリーフで3試合に登板、防御率1・47と好投(2勝)し、初の金メダル獲得に貢献した。大会後のミーティングでは、中日OBの井端代表コーチが「来年の夏の五輪は、このメンバーで金メダルを取りにいこう」と力を込めた言葉が心に刺さったという。「(五輪への)強い思いは増しました。なおさら準備していかなあかんと。ペナントの成績も大事なんですが、頭のどこかにその言葉はずっとありました」。

大野雄の主な国際大会成績
大野雄の主な国際大会成績

プレミア12から戻ると、冬のナゴヤ球場で球を握った。20年は2月1日の沖縄・北谷キャンプ初日にブルペン入り。コロナ禍で五輪は延期されたが、3度目の開幕投手をつかんだ。20試合で11勝6敗、防御率1・82。チームの8年ぶりAクラスをけん引し、2年連続最優秀防御率、初の沢村賞にも輝いた。

「野球人、スポーツ人でいる以上、トップの集まりに招集されたい思いはずっとあったし、そうあるべきだと僕は思う」。さらなる飛躍の契機になった五輪選出は、32歳の左腕にとって最初で最後の機会になる。

今季は11試合で3勝5敗ながら、ここ3試合はクオリティースタートで貢献。「落ち球(のツーシーム)は自分の武器。間違いなく(外国人選手を)抑える勝負球の1つ。昨季の終わりに、落ち球だけでは厳しいことを感じて、増やしたカットボールも有効的に使えています」。新球カットボールが、ダルビッシュも参考にしたという宝刀ツーシームをより生かしている。

自宅玄関には代表戦で着用したユニホームを額に入れて飾っている。2年ぶりの金メダルへ。竜のオリンピアンは、夢の集大成を家族の元に持ち帰る日を思い描いている。【伊東大介】

▽日本代表稲葉監督 大野投手は、先発の貴重な左投手として期待しています。