侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。ヤクルト山田哲人内野手(29)は、ユーティリティーさでチームを支える。与えられた役割で、チームの勝利に向かって精いっぱい貢献していく。

19年11月、プレミア12で韓国との決勝で左越えに逆転3点本塁打を放つ山田。左端は見つめる稲葉監督
19年11月、プレミア12で韓国との決勝で左越えに逆転3点本塁打を放つ山田。左端は見つめる稲葉監督

3度のトリプルスリーを達成した山田の今季成績に、満足しないファンも多いかもしれない。前半戦を終えて打率2割6分8厘、25本塁打、65打点、3盗塁。得点圏打率は2割2分6厘と落ち込む。しかし、ここぞの場面で集中力を発揮してきた。稲葉篤紀監督(48)が視察に訪れた4月14日DeNA戦では2本塁打。試合後、同監督は「正直、非常に心配している選手の1人ではあったが、視察に来たタイミングで2本見られるのも何かの縁かなと思う。プレミアの決勝のホームランを思い返すような彼らしいバッティングを見られた」。19年プレミア12決勝では、試合を決める3ランで世界一に貢献。プレッシャーを何度もはねのけてきた経験が、オリンピック(五輪)でも必要とされる。

山田のWBC、プレミア12成績
山田のWBC、プレミア12成績

プレミア12では本職の二塁ではなく、一塁での先発を5試合経験。稲葉監督からは、一塁ミットの準備も伝えられている。「もちろんセカンドが本職なので、そこはそうなんですけど、特にそこまでこだわりはないって言ったらおかしいかもしれないですけど。任されたところで僕は出たいと思いますし、そこできっちり仕事をこなしたいと思っているので、そこの場面で活躍できたらなと思う」と冷静に話した。

五輪出場への思いは人一倍強かった。「それを目標に、モチベーションに頑張ってきた」。幼い頃から水泳や柔道をテレビで見て、憧れた。「ヤワラちゃんだったり、北島康介さんとか。日本人じゃないけど、イアン・ソープとか。そういうのに刺激を受けて、僕も野球頑張ろうと子どもの頃は思ってました」と懐かしむ。

念願の自国開催での夢舞台に立てる。今度は山田が子どもたちの憧れとなる。金メダル獲得のため、どんな役割でも、バットでも足でも、全力で勝利に貢献していく。「どんどん緊張していくと思いますけど、気を抜くことなくというか。ほっとするんじゃなくて、さらに頑張るぞっていう気持ちです」。静かに闘志を燃やしていた。【湯本勝大】