侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。ソフトバンク千賀滉大投手(28)は「修正力」を発揮し、左足首の靱帯(じんたい)損傷から東京オリンピック(五輪)で戦える状態に仕上げた。

17年3月、WBC準決勝・米国戦に2番手で登板した千賀
17年3月、WBC準決勝・米国戦に2番手で登板した千賀

千賀が左足首の靱帯を損傷したのは4月だった。そこから五輪に間に合わせた。だが、追加招集発表後の1軍復帰戦となった今月6日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、自己ワースト10失点で3回途中KO。やはり、まだ万全ではないのか-。不安を残す内容だった。

そこから1週間。数々の修羅場を越えてきた男は、持ち前の修正力で、戦える状態を作り上げた。「自分の現状で何が足りないのか、何ができないのか把握できてますし、そこに関してアプローチしていく」。フォームなどを模索しながら、1時間以上ブルペンにこもった日もあった。

侍ジャパン合流前、最後の実戦となった13日のウエスタン・リーグ中日戦(ナゴヤ)。初回に直球を打たれ1失点すると、すぐさま2回にスタイルを変え、立て直した。スライダー、カットボールを多投し、相手が2軍とはいえ2回以降はわずか1安打。直球で空振りが取れなくても、6回を投げて三振を8個奪った。

千賀 変化球をたくさん使っちゃえば、制球はどうにでもなる。真っすぐについては考えるところはありますけど、ひとまず最低限の方向性はできた。いろいろな幅を広げられるように練習はしています。

千賀の主な国際大会成績
千賀の主な国際大会成績

この日の投球には、育成時代から千賀を見てきたソフトバンク倉野2軍投手コーチも舌を巻いた。「フォーム修正してきた成果がすでに表れている。このバランスなら大丈夫。そういう確信は持てました。あいつの修正能力の高さをあらためて感じましたね」。1週間でのフォーム修正に加え、試合中でのアジャスト。160キロを超えるストレートと「おばけフォーク」だけが武器ではない。今の状態が100%ではなくとも、持てるあまたの引き出しの中から現状のベストを選択し、チームを勝利に導く。

五輪本番のマウンドまで残る時間はあとわずか。「1日1日丁寧に過ごすだけ」と言う右腕は、就任当初から「投手陣を引っ張っていってほしい」と期待を寄せてくれた稲葉監督に、結果で報いる。【山本大地】