熱い兄と冷静な弟-。正反対の2人が甲子園で「兄弟二遊間」の夢をかなえ、快音も響かせた。

遊飛をジャックルしながらも捕球し、思わず表情を崩すノースアジア大明桜・石田一斗(2021年8月12日撮影)
遊飛をジャックルしながらも捕球し、思わず表情を崩すノースアジア大明桜・石田一斗(2021年8月12日撮影)

ノースアジア大明桜(秋田)の石田一斗(いっと)遊撃手(3年)と恋(れん)二塁手(2年)は、4-2で競り勝った1回戦の帯広農(北北海道)戦、2-8で敗れた2回戦の明徳義塾(高知)戦と、いずれも先発で出場。2試合で一斗が6打数2安打2打点。恋も負けじと6打数2安打1打点で続き、兄弟仲良く同じ回数の「Hランプ」をともした。

試合前ノックを受けるノースアジア大明桜・石田恋(2021年8月15日撮影)
試合前ノックを受けるノースアジア大明桜・石田恋(2021年8月15日撮影)

一斗が小学2年、恋が小学1年だった11年に野球を始めた。大阪・羽曳野市出身。野球好きの父正樹さん(47)の指導を受けながら、2人そろって練習した。夕食前など少しでも時間があればキャッチボールや素振りに励み、バドミントンのシャトルを使ったメニューに熱中した。小学時代の島泉ファイブボーイズ、中学時代の藤井寺ボーイズでも一緒にプレー。一斗が明桜高校に入学すると、恋もその1年後に後を追った。「ここを選んだ理由は兄貴がいて、同じ舞台で甲子園に出たいという夢があったからです」。進路決断に迷いはなく、チームメート歴は計9年になる。

大事な試合前に五厘刈りで気合を入れる兄に対し、弟は静かに闘志を燃やす。輿石重弘監督(58)も「性格は正反対です」と笑うが、一斗が背番号「6」、恋が「4」を背負い、センターラインを支えた。直近では19年夏、石見智翠館(島根)の関山愛瑠斗(あると)二塁手、和(なごみ)遊撃手に続く甲子園での「兄弟二遊間」となった。

幼いころから夢見てきた舞台。一斗は「兄弟で甲子園に出ることで両親に恩返しができたと思います」という。1回戦では2人が連係した守備機会はなかったが、2回戦では二-遊、遊-二の流れでアウトを2度奪った。恋は「自分の夢ではあったんですけど、一緒に守れて頼りになりますし、助けてもらうこともあったので、兄に感謝しかないです」と振り返った。

今後、恋が遊撃手を引き継ぐ可能性もあり、一斗は「自分を超えられるようにバッティングも守備も頑張ってほしいです」とエールを送る。恋の帽子には「心の繋がり」という言葉が書き込まれている。「兄貴と心をひとつにして、二遊間だし、2人で頑張っていこうという気持ちで書きました」。今夏の「兄弟二遊間」に続き、来年の甲子園では背番号「6」が2人をつなぐかもしれない。【山田愛斗】