聖光学院(福島)斎藤智也監督(58)は目の前の現実を冷静に受け止めて、気丈に答えた。

「どこかで途切れるのが記録ですから。仕方がないですね。8月(甲子園)まで一緒にユニホーム着て戦いたかったですけど、本当に良いチームだったので、いつ負けても悔いはないと思っていた」。

7月20日。光南との夏の福島大会準々決勝。0-1の8回にホームスチールの奇襲で同点に追いつくも、直後の8回裏に4失点。夏の絶対王者が、15年ぶりに地方大会で姿を消した。この敗戦で、戦前の和歌山中(現桐蔭)に並ぶ歴代最多タイの14大会連続甲子園出場を逃し、昨夏の独自大会を含め夏の福島大会連勝記録は「87」でストップ。07年から築き上げてきた長期政権が終わりを迎えたことを意味する。指揮官は淡々と振り返った。「ここまでよく頑張ったなという感覚もあります。『連覇』ってみなさんは言いますけど、私の中では1年1年の積み重ねがこうだった。その積み重ねが今年はついえたってことだと思います」。

聖地には立てなかったが「日本一の結束力」は今年もあった。現3年生は43人の大所帯。1度も公式戦に出場することなく高校野球を終える選手も少なくない。レギュラーと控え選手では実力差ももちろんある。それでも、聖光学院は夏の県大会開幕直前まで3年生は全員Aチーム(1軍)に在籍。ともに汗を流す意味がある。斎藤監督をはじめとする指導者たちの願いだ。「日本一のレギュラーであってほしいし、日本一の控え選手であってほしい。高校野球への3年間にかける思いや、プライドに今の立ち位置がレギュラーだから、控えだからと言って、色分けはしたくない。控え選手がベンチに入れない、試合に出られないとかもありながら、最後まで歯を食いしばって諦めないのが、ウチのチームの強さなので」。控えメンバーの勇姿にレギュラー陣には、1つの感情が芽生える。「チームを負けさすわけにはいかない」という強い使命感だ。だからこそ坂本寅泰(ともやす)主将(3年)は「控え選手らがチームを支えてくれた分も勝ちたかった。負けさせてしまって悔しいです」と試合後は仲間への思いを真っ先に口にした。

連覇という「十字架」を背負って戦った王者の夏は終わったが、ここまでの道のりに斎藤監督は堂々と胸を張った。「歴代の中でも良い歩みをしてきて、俺の自慢のできる3年生だった」とねぎらい、たたえた。

記録は途絶えてもチームを背負って戦い抜く「聖光野球」は、これからも脈々と受け継がれていく。【佐藤究】