4月26日のレンジャーズ戦。大谷はシーズン3度目の先発マウンドではベーブ・ルース以来100年ぶりの記録をつくった。前日のアストロズ戦で7号本塁打を放ち、本塁打トップに立っていた。本塁打トップの先発は1921年6月13日のルース以来となる快挙。投手としては今季9勝2敗に終わり、103年ぶりの「シーズン2ケタ勝利&2ケタ本塁打」の偉業達成はならなかったが、1世紀前に起こっていたことが目の前で起きている事実に人々は歓喜し、一瞬一瞬に酔いしれた。

ルースの親族も大谷の活躍を喜び、過去の伝説と重ね合わせた。孫のトム・スティーブンスさん(69)はメディアから取材を受けた3年前を思い起こし「そんなに大きなトピックではなかったから、話すのもちょっと難しかったんだ」と、当時の心境を明かした。日本から来た青年を語るには能力や結果を知る必要があった。時を経た今季「彼が何ができるのか、ようやく見られるようになった。今はすごく(大谷について)語りやすい」とうれしそうに取材に応じてくれた。

ルースから大谷へ-。“伝説の継承”にも期待している。「レガシーを永続させる方法は、若い人たちの興味をひくこと。多くの人は、ベーブについて知らない。なら、何が効果的かと言えば、まず野球に興味を持ってもらう。ショウヘイ・オオタニで言えば、彼を前に推し進めて、スポットライトを当てるということだね」。野球のさらなる振興へ、現代の二刀流選手へ希望を託した。

シーズンを終え、マドン監督(左)とハグするエンゼルス大谷(2021年10月3日撮影)
シーズンを終え、マドン監督(左)とハグするエンゼルス大谷(2021年10月3日撮影)

スティーブンスさんの話を聞き、私も自身の昔の出来事を思い出した。約20年前、学生時代の野球部の同僚が、映像を元にルースのフォームと走り方のものまねをしていた。それを見て、先輩、後輩ら皆で笑ったことを鮮明に覚えている。同じようなことが50年後や100年後、私たちが生きていない時代に、ショウヘイ・オオタニをまねる人々の姿が想像できた。子供たちや野球ファンはレジェンドをまねし、数々の逸話に花を咲かせることだろう。

スティーブンスさんがルースの功績を後世に伝えてきたように、大谷が成し遂げた偉業も後世に語り継がれていく。「2021年の大谷翔平」は永遠に残る。再び伝説的な二刀流選手が現れれば、人々は歓喜し、伝説のルーツをたどることになるだろう。届かなかった記録はあっても、今季の活躍はレガシーとなって生き続けるに違いない。【斎藤庸裕】(つづく)