まだまだ、前を向く。オリックスを戦力外になった神戸文也投手(27)は、12球団合同トライアウトを経て、社会人チーム入りが内定した。「僕にとって、初めての社会人野球。プロではなくなってしまったけれど、もう1回プロに戻れるように」。内定先からは正社員契約をもらった。「正社員雇用からプロに返り咲く前例はないと聞いた」。険しい道だとは承知の上で、このチャンスにかける。

20年6月、楽天戦で登板するオリックス神戸
20年6月、楽天戦で登板するオリックス神戸

16年育成ドラフト3位でオリックスに入団。19年7月25日に支配下選手登録された。2桁番号を背負うまで下積みが長かったため「正直、諦めていた時期もあった」と振り返る。希望をくれたのは酒井勉育成コーチ(当時)の言葉だった。「支配下選手になるだけが目標じゃない。1年でも長く野球ができるように頑張っていこう」と背中を押され、「気持ちがスッキリした。そこから死に物狂いでいけた」。

その年は8月に1軍に初昇格。19試合登板で5ホールドを挙げ、翌年のブレークを狙った。迎えた20年。コロナ禍で6月19日まで遅れた楽天との開幕戦(京セラドーム大阪)。1-1の8回に出番は巡ってきた。先発山岡からバトンを受け取り、2番手でマウンドへ。ただ、1死も奪えず4点を失った。

オリックス神戸の年度別成績
オリックス神戸の年度別成績

「良い場面を任されたけれど、やられてしまった。(19年に)1軍で投げているときは、自分のデータが出ていなかったから抑えられたのもある。翌年、データを取られて、一気に打者の反応が変わった」

プロの世界を思い知った。5試合を投げて、開幕から2週間後に出場選手登録を抹消。これを最後に今季終わるまで1軍に呼ばれることはなかった。

チャンスは一瞬。教訓を得て、次の機会を迎える。【真柴健】

21年限りでオリックスを退団する選手
21年限りでオリックスを退団する選手