なつかしい顔がユニホームを変えて甲子園に戻ってきた。日大三島の永田裕治監督(58)だ。報徳学園の監督として最後に出場したのは5年前(89回大会)になる。「(報徳時代の)教え子には違和感があったかもしれないが、私自身は何も違和感がありませんでした」。同監督が復活の舞台をこう話した。

ベンチ前の立ち位置も5年前と変わらない。本塁からは一番遠い、カメラマン席との境目が定位置だ。1回、エースの松永陽登(3年)が乱れた。3安打され2四球も絡んで3点を失った。この間、永田監督は腕組みしたまま、じっと選手を見守った。伝令を送ることもなかった。

3点目は暴投で失った。投球がファウルグラウンドを転がるシーンに、85回大会(13年)の常葉学園菊川戦が浮かんだ。「同点だ」と思われた場面が一転、次の瞬間には試合が終わっていた。立ち尽くした永田監督の姿が印象に残る。

試合はこうだ。2点を追う報徳学園が9回1死二、三塁の好機を築く。ここで次打者の打球が右翼手を襲った。飛距離は十分。三塁走者がタッチアップすると二塁手の今坂僚介が中継に入り、本塁に向けて大遠投した。そのボールがなんと捕手を無視して、その頭上はるか上を通過した。

三塁走者に続き、二塁走者の片浜大輝も三塁を回った。「コーチの『ゴー』の声が聞こえた。『暴投や』の声も聞いたし、ボールがそれたのも見ました」の話が残る。ところがだ。バックネットのすぐ前までカバーに走った堀田竜也投手がなんとノーバウンドで捕球した。

1点は入ったものの、ボールは右→二→投→三→捕とわたって、最後は堀田が片浜にタッチした。「投手が(ボールを)持っていたとは思わなかった」。片浜が悔しがった。悪送球して逆に勝利を招いた今坂には控え選手から冷やかしの声が飛んだ。「あれ、トリックプレーだよな」。

この日、そんな想定外のプレーはなかった。9回には代打3人を送ったが、得点できなかった。それでも永田監督は選手をたたえた。「生徒たちが(甲子園に)連れてきてくれた。(自分を)信用してここまでついてきてくれたと思っている。夏に向けてまた一から頑張ります」。日大三島の監督就任は20年4月。再挑戦は始まったばかりだ。【米谷輝昭】

第85回選抜高校野球選手権大会 報徳学園対常葉菊川 9回裏報徳1死二、三塁、山口の右犠飛で二塁走者片浜は三本間に挟まれタッチアウト、三塁手大西(2013年3月27日撮影)
第85回選抜高校野球選手権大会 報徳学園対常葉菊川 9回裏報徳1死二、三塁、山口の右犠飛で二塁走者片浜は三本間に挟まれタッチアウト、三塁手大西(2013年3月27日撮影)