ドラフト会議が迫ってきた。

急上昇してきた上位候補や、先輩への思いを胸に戦う主将、指名漏れからはい上がってきた選手など。それぞれの“現在”に迫った。運命の“10・20”を待つ男たちを全5回で紹介する。第1回は、今夏甲子園に出場した日本文理(新潟)の最速150キロ右腕・田中晴也投手(3年)。

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体のサイズ(186センチ、92キロ)に大きな変化はない。「でも、少し絞れたかもしれないです」。田中は表情を緩めた。夏の甲子園から帰った後も寮に残り、後輩たちにまじりながら練習を続けてきた。3日間動いて1日オフ。トレーナーの指導のもとで、走り込み、体幹、筋トレと体作りのメニューに取り組む。OBで元ヤクルト投手の本間忠外部コーチ(45)とフォームのチェックを行いブルペンにも入る。

「指名されたら」と枕ことばを付けながら「2、3年で活躍できるようになりたい」とイメージを描く。今夏の甲子園の前にはプロ志望届提出を決めていた。新潟大会準決勝の北越戦で自己最速を2キロ上回る150キロをマーク。「目標だった数字。自信になった」。進歩を確信できたことが大きかった。

学年上位の学力の持ち主。鈴木崇監督(42)が「調整はすべて任せていた」と大人扱いするように、周囲に信頼される性格。大学進学の選択もあった。それでも「投げ切れる体力がついてきたし、球速も出るようになってきた。プロで鍛えたいという思いが強くなった」。潜んでいた力が表に出つつある感覚を信じた。

1年秋からエースで中軸を打った。二刀流としても注目されたが、高校入学前から投手1本の気持ちは固まっていた。昨年、今年と2年連続で出場した甲子園はともに初戦敗退。「勝てなかったのは悔しいけど、いい経験ができた」。昨年の敦賀気比戦で当時自己最速の147キロ、今年の海星戦では今大会最速タイの148キロを記録。力の一端は見せた。

甲子園を通して新しい目標もできた。「プロになって対戦したい」と高松商の浅野翔吾、大阪桐蔭の川原嗣貴、松尾汐恩、海老根優大を挙げる。「自分よりもレベルの高い選手。戦うか、同じチームで頑張りたい」。甲子園での顔合わせはかなわなかったが、高校トップクラスの同期生をライバル視することがモチベーションにもなる。

憧れの投手はオリックス山本由伸。そこに最近、ロッテ佐々木朗希も加わった。「直球とフォークのどちらかと、誰もが分かっていても圧倒できるのがすごい」。夢は「WBCに出て日の丸を背負い、第一線で活躍できるようなスケールの大きな選手」。現実にするための最初の扉が20日。「指名されるか待つしかない。少しでも力をつけ、プロに入った後の準備をしておきます」。実力アップの手を抜かず、日々を過ごす。【斎藤慎一郎】

22年8月8日、全国高校野球 海星対日本文理 日本文理先発の田中
22年8月8日、全国高校野球 海星対日本文理 日本文理先発の田中