3度目の指名漏れから1年、鷺宮製作所・小孫竜二投手(25=創価大)が、再びドラフト上位候補に名を連ねた。高校、大学、そして最速155キロをマークした社会人2年目の昨季もプロから指名がかからなかった。今季は制球力と安定感で評価が急上昇。17日の関東選手権準決勝の日立製作所戦(等々力)で1回を3者連続三振の快投を演じた。20日のドラフト会議を前にした最終登板で、中日立浪和義監督(53)ら4球団が視察する中でラストアピールした。

小孫は1人の指導者との出会いで本格化を遂げた。「ここ1年で制球力と変化球の精度が抜群に良くなりました」。社会人3年目右腕は、3度目の指名漏れからこの1年で、進化を実感している。

身長179センチ、体重87キロ。最速155キロの直球にキレ味鋭いスライダーを組みあわせ、相手打線をしのぐ。先発から抑えまで、幅広く対応が可能な即戦力だ。

遊学館では15年夏に甲子園出場。2回戦で九州学院と対戦し、村上宗隆(現ヤクルト)を4打数無安打に抑えた。創価大では同期だった杉山晃基(現ヤクルト)、望月大希(現日本ハム)と投手陣の中心にいた。社会人2年目は最速を155キロまで伸ばした。これまで3度、候補に挙がったが、プロ入りはならず。小孫は分析する。「昨年はスライダーと真っすぐしかなかった。制球力もまだまだでした」。進化が必要だった。

今年1月、OBで現役時代6度の都市対抗出場を果たした幡野一男投手コーチ(53)が就任。この出会いが運命を変えた。着手したのはリリースポイントの安定だった。幡野コーチは当時の印象を「体の使い方、ばらつきが多かったですね」と振り返る。基本的な考え方から立ち返った。キャッチボールから投球練習まで、徹底的に意識改革を図った。小孫は「『ここでリリースすれば、狙ったあそこに行く』。という感覚を徹底して植え付けました」。二人三脚、付きっきりで投げに投げた。

変化は表れた。「3年目の感覚は本当に違います」。リリースポイントが安定するに連れ、制球力に改善が見られた。先発転向を機に伝授されたフォークとカーブの精度も向上し、成績は安定。6月の都市対抗東京都2次予選決勝では、9回を10奪三振1失点。四死球2つの安定感で、2年ぶりの本大会出場に導いた。

この1年の成長を幡野コーチは「これは本当に簡単なことではないんです」と語気を強める。「ある程度のアドバイスはしましたが、何十倍も努力したのは本人。二十数年生きてきて、染み付いたクセを修正するのは簡単ではない。そこの努力ではないですかね」。真面目で素直な野球への姿勢が、結果につながった。

小孫は「大学からプロに入れていてもダメだったかもしれません。社会人での経験は本当に良かった」と振り返る。さらなる進化を遂げた25歳右腕が“4度目の正直”を待つ。【阿部泰斉】

15年8月、九州学院戦の6回、村上宗隆(後方)を中飛に打ち取る遊学館・小孫
15年8月、九州学院戦の6回、村上宗隆(後方)を中飛に打ち取る遊学館・小孫
ドラフトファイル:小孫竜二
ドラフトファイル:小孫竜二