「韓国プロ野球の伝え手」室井昌也氏が、WBC韓国代表を語った。最終回は野手編。【取材・構成=古川真弥】

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野手の初選出は韓国プロ野球を経験していない崔志万(チェ・ジマン)、トミー・エドマンのメジャーリーガーに、ベテラン捕手の李知栄(イ・ジヨン)の3人だけ。代わり映えする感じはしませんが、投手と比べるといいですね。先発オーダーを予想しました。

1番中堅 朴海旻(パク・ヘミン)

2番右翼 李政厚(イ・ジョンフ)

3番左翼 金賢洙(キム・ヒョンス)

4番一塁 朴炳鎬(パク・ビョンホ)

5番DH 羅成範(ナ・ソンボム)

6番三塁 崔廷(チェ・ジョン)

7番遊撃 金河成(キム・ハソン)

8番捕手 梁義智(ヤン・ウィジ)

9番二塁 トミー・エドマン

東京オリンピック(五輪)で伊藤大海投手が追いロジンをした時、球審に「ダメじゃないのか」と確認した打者が、1番の朴海旻です。15~18年に4年連続盗塁王の後、停滞しました。復活のきっかけを与えたのが、当時所属のサムスンでコーチや2軍監督を歴任した落合英二さん(現中日ヘッド兼投手コーチ)です。「ヘミン、前はもっとユニホームが汚れてたよ」と。それでプレースタイルを思い出し、再ブレークしました。

李政厚はチームでは3番ですが、全体の収まりを考え2番にしました。昨季首位打者、打点王でMVP。打線の核です。韓国では別格と選手たちも言っています。とにかく選球眼がいい。見逃し三振が非常に少なく、追い込まれてもバットが出る。それがヒットになる。打ち損じがなく、1発もある。3番のため昨季は5盗塁と少なかったですが、足もある。守備範囲が広く、肩も強い。イチロー選手が好きで、入団時の背番号41を2年目から51にしました。お父さんの李鍾範さんは「韓国のイチロー」という触れ込みで来日しましたが、右打ちだった。息子は左打ちです。本当に韓国のイチローです。ルックスもいいし完璧です(笑い)。

クリーンアップは全員、状況に応じた打撃ができます。3番の金賢洙が主将を務めます。4番の朴炳鎬はケガもあり、昨秋の50人の予備登録からは外れました。ですが代表への思いが強く、回復も順調で入りました。15年のプレミア12で大谷投手から詰まりながらも二塁打を打っています。東京五輪は出てませんが、右打者としての存在感は大きいです。詰まった当たりで内野の頭を越えます。東京ドームならフェンスオーバーしそうです。

6番に置いた崔廷は現役最多の429本塁打。死球は歴代最多の313です。代表では華々しい活躍はしてませんが、踏み込んで打ってきます。他の候補がケガしたため、三塁手が彼1人なのは不安材料です。

7番、9番にはメジャーの二遊間コンビを置きました。エドマンの起用法はまだ分からないので、この打順にしています。韓国系アメリカ人のエドマンを代表に呼んだのは、栗山監督がヌートバー選手を呼んだことも影響していると思います。韓国でも韓国系選手が入ることは歓迎されています。遊撃の金河成は肩が強く足もあって、松井稼頭央さん(現西武監督)のイメージです。

8番の梁義智は韓国球界NO・1捕手です。打力があり、東京五輪などで4番を打ったこともあります。リードは投手の良さを引き出すタイプ。肩は悪くありません。(この項おわり)

◆室井昌也(むろい・まさや)1972年(昭47)10月3日、東京・豊島区生まれ。日大芸術学部演劇学科中退後、劇団活動、テレビのリポーターなどを経て02年韓国に留学。韓国プロ野球の取材を開始する。04年から著書「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」を毎年発行。06年から現地紙コラムニストを務める。20年から沖縄のFMコザで「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」に出演中。ストライク・ゾーン代表。

WBC韓国代表野手
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